魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
サラマンダーの火力やケルベロス、ドラちゃんの脚力は、召喚した者の実力によって変わってくる。

イエローストーン王国改めクリスタルパレスを結界で包み、サラマンダーと眷属の火蜥蜴たちを大量に召喚し、ケルベロスとドラちゃんを同時に召喚したコハクは平然とした顔で、意識の繋がっているサラマンダーと会話を交わしていた。


「ぜってぇ人を焼くんじゃねえぞ、氷を溶かすだけだからな」


『わかっている。何度も同じことを言うな』


ドラちゃんのように山のように大きくなったサラマンダーがクリスタルパレスのちょうど真ん中あたりで浮遊したまま盛大な炎を吐くと、完全に凍り付いた建物がどんどん溶けていき、用水路には氷が溶けた水が洪水のように音を立てて流れてゆく。


何かしたいけれど、魔法も使えないし役に立つことができないラスはもどかしい思いになりながらコハクの横顔を見つめ、精霊界から帰って来てからというもののずっと持ち歩いているショルダーバッグからポッドを出すと、黄金色の飲み物をコハクに差し出した。


「お、サンキュ」


「コー、無理しないでね。コーがバテちゃったら…」


「へーきへーき。これっくらいどうってことねえし。おいベルル」


「はいはいなんですか?」


ラスの頭の上に留まっていたベルルがちょいちょいと人差し指で呼び出され、こそこそと会話を始めた。


「…っていうわけで、今からすぐ行って来い」


「えー!?それは…コハク様…やめた方がいいと思いますけど…」


「あいつらが来ればさらに人を集めることができる。おら、さっさと行け!」


ベルルがコハクに急かされてどこかへ飛んで行ってしまうと、ラスはコハクの黒いマントを引っ張ってその意味を問うた。


「ベルルはどこに行っちゃったの?」


「ちょっとお使いー。それよかこの分だと川が氾濫するなー。ウンディーネ」


『はいはい、やっと呼んでくれたわね。はーい、おチビさん』


「ウンディーネさんっ」


水色の透明な膜に覆われた半透明の精霊が現れると、コハクは遠くに見える大きな川を差し、サラマンダーの時とは違い、敬意を持って頼んだ。


「氾濫にならないように調整をしてくれ」


根回し完璧。
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