魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
『相変わらず精霊使いが悪いわねー、面白そうだからやってあげるわよ』


「サンキュ。じゃ、ノームは土係担当な。休眠してた土を活性化させてくれ。シルフィードはサラマンダーの火力を中和しつつこれを撒いた後、春風を送ってくれ」


『それはグリーンリバーで取れた花の種?いいわよ、でも寒冷地だしすぐ枯れちゃうかも』


今度はグリーンの半透明の膜に包まれたシルフィードがラスの回りを飛び回り、時々頬にキスをしたりしてからかっていると、空中庭園にグリーンリバーから手伝いにきたエプロン姿の大型の魔物たちがぞろぞろと現れ、腕に抱えられている大きな袋をラスの前に下ろし、中を開けさせた。


「寒冷地にも耐えられる花を開発しておいた。どうだチビ、俺って天才だろ?」


「コー、すごい!偉いねコー、よしよし」


ラスから頭を撫でられて絶好調の魔王がふんぞり返ると、何袋もある袋がふわりと宙に舞い、シルフィードと共にサラマンダーの炎で解かされてほかほかになった大地に花の種を撒いた。


『ほらおじいちゃん頑張って!きりきり働かないとどやされるわよ』


『儂は腰が痛いんじゃ、年寄には優しくしてくれ』


皆文句を言いつつもコハクに協力してくれていて、ラスは嬉しくなって隣に立っていた魔物のお尻から生えている牛のような尻尾をぎゅっと握り、それを見た魔王が嫉妬してその魔物に盛大な回し蹴りをくらわした。


「俺の天使ちゃんに触るんじゃねえ!」


「すいません!」


「コー、すごいね、四精霊さんたちがみんなでイエロー…ううん、クリスタルパレスを元に戻そうとしてくれてる…」


ラスがきらきらした瞳で街を見下ろし、コハクは集中力を切らさずにラスの前で片膝をつくと、両手をぎゅっと握り、頬にキスをした。


「チビが望むものならなんでも手に入れてやる。俺は天才だから俺にできないことはなーんにもねえんだ。そうだろ?」


またコハクの赤い瞳もこれからこの王国をどうしようかという意欲と好奇心にきらきら光り、コハクの瞼にちゅっとキスを返した。


「なんでも?じゃあ私が世界が欲しいって言ったらどうするの?」


「そん時はも1回世界征服やってやるよ。次は本気でな」


ラスが望むものなら、何でも――
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