魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
リロイの胸中は複雑になった。
魔王城を目指す旅の間に複雑な感情が絡み合い、邪魔をしただろう。
それは…自分も同じこと。
ティアラも同じこと。
男女が共に旅をするのだから、何も起こらないはずがない。
「リロイ、あなたにはまだ少し話があるから残って下さい。ティアラ、あなたは部屋に戻っていて」
「はい」
フィリアに呼び止められ、ティアラが執務室を出て行くと、ティアラよりはやや印象はきついが、目が合うとやわらかく笑いかけてくれて、ローブに手をかけると紐を解き、家族にしか見せたことのない秘密をリロイに見せた。
「そ、その傷は…」
「魔王につけられた傷です。この傷だけはどうやっても治らなかった…。十数年前までは、魔王はそういう男でしたが…今は違いますか?」
「…影は…」
――自分の知っている魔王は、ラスが小さな頃から甲斐甲斐しくラスの世話をしており、下ネタも封印していたように見えた。
ラスが16歳になると、自身の復活もさることながら、本人も予想していなかったのか…本気でラスを愛しているのは誰から見ても明白で…
ラスを奪われるかもしれないという焦りを覚え、魔法剣に心を乗っ取られ…
「…今は違うと思います。確かに魔物を相手にすると残虐な奴だなって思いますけど、ラスに対しては…時々おかしなことを言っていますが、真剣に愛しているのだと思います」
フィリアの胸の谷間に走る真一文字の蚯蚓腫れのような傷跡から目を逸らすと、フィリアはまた紐を結び直し、リロイに右手を差し伸べた。
「今のティアラと十数年前の私はまるで同じ。だから二の舞にはさせたくないけれど、あなたはあなたの気持ちに正直になってね。ただし、あの子は私の娘なのだから、あなたを誘惑するかもしれないわよ」
思わずくすっと笑うと、フィリアの右手の甲にキスをして、約束をした。
「女王陛下…ティアラ王女が幸せを掴むことができるように尽力します。必ず…」
「ええ。あなたもね」
――カイとリロイの姿が重なる。
悲しい恋を乗り越えて、新しい恋をその手に掴むことができるように祈った。
魔王城を目指す旅の間に複雑な感情が絡み合い、邪魔をしただろう。
それは…自分も同じこと。
ティアラも同じこと。
男女が共に旅をするのだから、何も起こらないはずがない。
「リロイ、あなたにはまだ少し話があるから残って下さい。ティアラ、あなたは部屋に戻っていて」
「はい」
フィリアに呼び止められ、ティアラが執務室を出て行くと、ティアラよりはやや印象はきついが、目が合うとやわらかく笑いかけてくれて、ローブに手をかけると紐を解き、家族にしか見せたことのない秘密をリロイに見せた。
「そ、その傷は…」
「魔王につけられた傷です。この傷だけはどうやっても治らなかった…。十数年前までは、魔王はそういう男でしたが…今は違いますか?」
「…影は…」
――自分の知っている魔王は、ラスが小さな頃から甲斐甲斐しくラスの世話をしており、下ネタも封印していたように見えた。
ラスが16歳になると、自身の復活もさることながら、本人も予想していなかったのか…本気でラスを愛しているのは誰から見ても明白で…
ラスを奪われるかもしれないという焦りを覚え、魔法剣に心を乗っ取られ…
「…今は違うと思います。確かに魔物を相手にすると残虐な奴だなって思いますけど、ラスに対しては…時々おかしなことを言っていますが、真剣に愛しているのだと思います」
フィリアの胸の谷間に走る真一文字の蚯蚓腫れのような傷跡から目を逸らすと、フィリアはまた紐を結び直し、リロイに右手を差し伸べた。
「今のティアラと十数年前の私はまるで同じ。だから二の舞にはさせたくないけれど、あなたはあなたの気持ちに正直になってね。ただし、あの子は私の娘なのだから、あなたを誘惑するかもしれないわよ」
思わずくすっと笑うと、フィリアの右手の甲にキスをして、約束をした。
「女王陛下…ティアラ王女が幸せを掴むことができるように尽力します。必ず…」
「ええ。あなたもね」
――カイとリロイの姿が重なる。
悲しい恋を乗り越えて、新しい恋をその手に掴むことができるように祈った。