魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
“できればあなたと結婚してほしかった”
そう言われた気がした。
だが身分違いだし、何よりラスのことを諦めたからすぐティアラに乗り換えるような軽薄なことはしたくはない。
白騎士となるべく幼い頃から高潔な思想を教えられ、気高くあれと教えられて育ってきたのだから、この鎧とこのマントを脱ぐ日までは、その思想は貫き通したい。
「ティアラの部屋は…」
捜し歩いていると、王族にしか入れないフロアにたどり着いたらしく、急に人気が無くなり、1番奥の部屋から話し声が聴こえた。
『やっ!やめて下さい…!』
『あなたは私の花嫁になるのだからキスくらい…』
『いやっ!』
声は切迫して悲鳴交じりだったので、無礼を承知でノックもなしにドアを開けると、そこにはソファに座ったティアラの横で、ティアラの手を握っていた40代程と思しき白髪の混じった黒髪の男が居た。
目尻にも首にも皺があり、およそ若々しさは感じられない。
…こんな男に嫁ぐのかと思うとやり切れない気持ちになったリロイは、入り口に立ったまま何も言わず、ティアラを見つめた。
「リロイ…!」
「ティアラ…その方があなたのフィアンセなんですか?」
――問うと、ティアラがその事実を恥じたように顔を伏せ、男の顔は逆に濡れ場に踏み込んだリロイに烈火の如く怒りを覚え、詰め寄ってきた。
「なんだお前は…!」
「失礼しました、僕はゴールドストーン王国の白騎士団隊長のリロイと申します。…あなたはどちらの小国…」
小国の出という情報しか知らなかったが、わざとそう問うと、プライドが高いのか短い顎髭を撫でながら腰に下げている剣の鞘に手をかけた。
「小国だと?それでも貴様よりは地位は上だ。ここはティアラ王女と私の部屋になる場所だ。即刻出て行け」
「そうですか、わかりました」
歯向かわず、まるで虫けらを見るかのような瞳で一瞬男を見た後頭を下げて退出すると、言いようのない苛立ちが体内を暴れ回り、リロイを苦しめた。
「あんな男と…ティアラが…!」
幸せな人生を歩んでほしいのに。
キスも拒み、嫌がるティアラを見たリロイはしばらく言いようのない苛立ちを抱えた。
そう言われた気がした。
だが身分違いだし、何よりラスのことを諦めたからすぐティアラに乗り換えるような軽薄なことはしたくはない。
白騎士となるべく幼い頃から高潔な思想を教えられ、気高くあれと教えられて育ってきたのだから、この鎧とこのマントを脱ぐ日までは、その思想は貫き通したい。
「ティアラの部屋は…」
捜し歩いていると、王族にしか入れないフロアにたどり着いたらしく、急に人気が無くなり、1番奥の部屋から話し声が聴こえた。
『やっ!やめて下さい…!』
『あなたは私の花嫁になるのだからキスくらい…』
『いやっ!』
声は切迫して悲鳴交じりだったので、無礼を承知でノックもなしにドアを開けると、そこにはソファに座ったティアラの横で、ティアラの手を握っていた40代程と思しき白髪の混じった黒髪の男が居た。
目尻にも首にも皺があり、およそ若々しさは感じられない。
…こんな男に嫁ぐのかと思うとやり切れない気持ちになったリロイは、入り口に立ったまま何も言わず、ティアラを見つめた。
「リロイ…!」
「ティアラ…その方があなたのフィアンセなんですか?」
――問うと、ティアラがその事実を恥じたように顔を伏せ、男の顔は逆に濡れ場に踏み込んだリロイに烈火の如く怒りを覚え、詰め寄ってきた。
「なんだお前は…!」
「失礼しました、僕はゴールドストーン王国の白騎士団隊長のリロイと申します。…あなたはどちらの小国…」
小国の出という情報しか知らなかったが、わざとそう問うと、プライドが高いのか短い顎髭を撫でながら腰に下げている剣の鞘に手をかけた。
「小国だと?それでも貴様よりは地位は上だ。ここはティアラ王女と私の部屋になる場所だ。即刻出て行け」
「そうですか、わかりました」
歯向かわず、まるで虫けらを見るかのような瞳で一瞬男を見た後頭を下げて退出すると、言いようのない苛立ちが体内を暴れ回り、リロイを苦しめた。
「あんな男と…ティアラが…!」
幸せな人生を歩んでほしいのに。
キスも拒み、嫌がるティアラを見たリロイはしばらく言いようのない苛立ちを抱えた。