魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「待ってください、リロイ…、待って…!」
なるべく早くティアラの部屋から去ろうと大きなストライドで脚を動かし続けていると、後を追ってきたティアラからマントを握られ、ようやく脚を止めた。
…が、かける言葉は見つからない。
振り向かず、黙ったままでいると、ティアラが息を整えながらまたマントをくいっと引っ張った。
「さっきは…、ありがとうございました…」
「…いえ、いい雰囲気だったのに邪魔をしてしまって申し訳ありませんでした」
棘のある言葉――
棘のある口調になり、リロイもティアラも焦りながら互いに言い訳を口にした。
「いい雰囲気なんて…やめてください、私…まだあの方には触れられたくなくて…」
「僕こそ…僕は何の関係もないのに…もうこの話はやめましょう」
ティアラの顔がくしゃりと歪んだ。
不安を拭い去ってやりたいのに、自分の口から出た言葉はティアラをも拒絶する言葉――
気付いた時にはもう遅く、ティアラの手がそろそろと離れると俯き、肩を震わせた。
「…ティアラ…」
「…いいんです。あなたに縋ろうと思った私の心の弱さ…早く直さなくてはいけないですね。ごめんなさい、もう頼ったりしません。行きましょう」
“もう頼ったりしない”
その言葉はリロイを激しく傷つけた。
救ってやりたいのに拒絶され、自分が拒絶したせいだというのに、まるでティアラが悪いと思ってしまった自分自身を恥じた。
――今までは、ラスのために生きていた。
けれどラスは自身の手で道を切り開き、進もうとしている。
そしてティアラも――
「…待ってください、ティアラ」
「早く行きましょう、もっと多くの町を回らなくては」
「ティアラ!」
振り向かないティアラの手を強く引いて振り向かせると、その黒ダイヤのような瞳にはうっすらと涙が溜まり、リロイは親指で涙を拭ってやると、恐る恐るティアラを包み込むようにふわっと抱きしめた。
「…そんなにいやなら結婚なんてしなきゃいいのに」
「…っく、……ぅっ」
嗚咽を漏らすティアラを抱きしめたまま、それ以上何も言わず、ティアラが落ち着くまでそのままでいた。
なるべく早くティアラの部屋から去ろうと大きなストライドで脚を動かし続けていると、後を追ってきたティアラからマントを握られ、ようやく脚を止めた。
…が、かける言葉は見つからない。
振り向かず、黙ったままでいると、ティアラが息を整えながらまたマントをくいっと引っ張った。
「さっきは…、ありがとうございました…」
「…いえ、いい雰囲気だったのに邪魔をしてしまって申し訳ありませんでした」
棘のある言葉――
棘のある口調になり、リロイもティアラも焦りながら互いに言い訳を口にした。
「いい雰囲気なんて…やめてください、私…まだあの方には触れられたくなくて…」
「僕こそ…僕は何の関係もないのに…もうこの話はやめましょう」
ティアラの顔がくしゃりと歪んだ。
不安を拭い去ってやりたいのに、自分の口から出た言葉はティアラをも拒絶する言葉――
気付いた時にはもう遅く、ティアラの手がそろそろと離れると俯き、肩を震わせた。
「…ティアラ…」
「…いいんです。あなたに縋ろうと思った私の心の弱さ…早く直さなくてはいけないですね。ごめんなさい、もう頼ったりしません。行きましょう」
“もう頼ったりしない”
その言葉はリロイを激しく傷つけた。
救ってやりたいのに拒絶され、自分が拒絶したせいだというのに、まるでティアラが悪いと思ってしまった自分自身を恥じた。
――今までは、ラスのために生きていた。
けれどラスは自身の手で道を切り開き、進もうとしている。
そしてティアラも――
「…待ってください、ティアラ」
「早く行きましょう、もっと多くの町を回らなくては」
「ティアラ!」
振り向かないティアラの手を強く引いて振り向かせると、その黒ダイヤのような瞳にはうっすらと涙が溜まり、リロイは親指で涙を拭ってやると、恐る恐るティアラを包み込むようにふわっと抱きしめた。
「…そんなにいやなら結婚なんてしなきゃいいのに」
「…っく、……ぅっ」
嗚咽を漏らすティアラを抱きしめたまま、それ以上何も言わず、ティアラが落ち着くまでそのままでいた。