魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
バスケットにサンドウィッチとワインを入れ、コートを着て厚着をしたラスとベルルが森へ向かって歩いてゆく姿をリロイがバルコニーから見ていた。
「あれは…ベルル…」
「魔王の使い魔だね。何をしに…」
グラースが馬を駆って出て行き、ベルルが現れた。
カイは首を捻ったが、ラスがベルルと手を繋ぎながら笑顔でいることに安心し、カイに頭を下げた。
「陛下…昨晩は申し訳ありませんでした。ラスを興奮させてしまって…」
「仕方ない。だが性急なのは困る。あの子の心が壊れてしまったら…私たちは何を拠り所に生きてゆけばいいのかわからなくなる」
リロイはこの王国を任せられる器の男になった。
が、ラスが絡む事象にはどうしても感情的になり、いち早く魔王のことを忘れてもらいたいという思いが先走っている。
リロイもまた、魔王に呪われている。
「僕もベルルと話がしたい」
「今はやめておきなさい。あの黒妖精に今は任せるべきだ」
見守ることしかできない苦痛が、カイとリロイを襲っていた。
――その頃ラスは森へ向かいながら自分の知らないコハクのことをベルルから色々教えてもらっていた。
「コーって…女たらしだったんだね。エリノアさんやスノウ姫のことはコーから聞いてたけど…」
「そりゃコハク様は世界一かっこいい男だもん、女が群がるに決まってるでしょ。ま、あたしが制裁を加えてやったけどね」
「コーの馬鹿」
自分の影になる前のことだが、やきもちを妬いて頬を膨らませたラスを座らせると、とある者の名を口にした。
「オーディンも2年間グリーンリバーに帰ってきてないの。コハク様があの日居なくなって…それからずっと見てないの。どこに居るんだか」
「!オーディン…!あのね、コーが私の夢の中で“オーディンに会え”って言ったの。思い出した…!オーディンさんを捜さなきゃ!」
「え、ほんとに?!オーディンは世界を見分して回ってるから本来はひとつの場所に留まってることはないの。コハク様に心酔してたから今までは傍にいたけど…」
希望の光が見えては、隠れる。
ラスの瞳が輝いた。
濁りは綺麗に消えていた。
「あれは…ベルル…」
「魔王の使い魔だね。何をしに…」
グラースが馬を駆って出て行き、ベルルが現れた。
カイは首を捻ったが、ラスがベルルと手を繋ぎながら笑顔でいることに安心し、カイに頭を下げた。
「陛下…昨晩は申し訳ありませんでした。ラスを興奮させてしまって…」
「仕方ない。だが性急なのは困る。あの子の心が壊れてしまったら…私たちは何を拠り所に生きてゆけばいいのかわからなくなる」
リロイはこの王国を任せられる器の男になった。
が、ラスが絡む事象にはどうしても感情的になり、いち早く魔王のことを忘れてもらいたいという思いが先走っている。
リロイもまた、魔王に呪われている。
「僕もベルルと話がしたい」
「今はやめておきなさい。あの黒妖精に今は任せるべきだ」
見守ることしかできない苦痛が、カイとリロイを襲っていた。
――その頃ラスは森へ向かいながら自分の知らないコハクのことをベルルから色々教えてもらっていた。
「コーって…女たらしだったんだね。エリノアさんやスノウ姫のことはコーから聞いてたけど…」
「そりゃコハク様は世界一かっこいい男だもん、女が群がるに決まってるでしょ。ま、あたしが制裁を加えてやったけどね」
「コーの馬鹿」
自分の影になる前のことだが、やきもちを妬いて頬を膨らませたラスを座らせると、とある者の名を口にした。
「オーディンも2年間グリーンリバーに帰ってきてないの。コハク様があの日居なくなって…それからずっと見てないの。どこに居るんだか」
「!オーディン…!あのね、コーが私の夢の中で“オーディンに会え”って言ったの。思い出した…!オーディンさんを捜さなきゃ!」
「え、ほんとに?!オーディンは世界を見分して回ってるから本来はひとつの場所に留まってることはないの。コハク様に心酔してたから今までは傍にいたけど…」
希望の光が見えては、隠れる。
ラスの瞳が輝いた。
濁りは綺麗に消えていた。