魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「何でも屋さんの顔…なにかを企んでる顔だわ」
自室にローズマリーを誘ったオーディンは、背中にそっと投げかけられた声に苦笑して振り返った。
「そうですか?いつも通りの顔だと思いますが」
「私だって長いこと生きてるのよ。見くびらないでほしいわね」
ソファに座り、クリスタル製の水差しから水をグラスに移すと、いつも携帯している粉薬を取り出し、オーディンが見つめる中それを苦そうにして飲んだ。
「それはコハク様が作った薬ですか?」
「ええ、そうよ。追い出した後もずっと定期的に家の前に“落ちてた”の。声をかければいいのにそれができなくて、いつもしばらく家の前に立ってたわ。ふふ、可愛いわよね」
「あなたから声をかければよかったでしょうに」
「私が追い出したのよ。出て行ってほしかったから、追い出したの。だから招き入れるはずがないわ」
コハクとローズマリーの馴れ初めはあまり聞いたことがない。
コハクはそれを話したがらなかったし、今まであまり興味はなかったのだが…
ローズマリーという女性に興味を持ったオーディンはソファに座ると上体を倒して前のめりになった。
「愛していたから…ですか?」
「…さあ、どうかしら。私はコハクが赤ちゃんだった頃から知ってるのよ。そりゃ愛情はあったけど」
「母性…ではなく愛情でしょう?愛しいと思い、そして願った通り、成長したコハク様に愛された。そして追い出した。追い出す必要がありましたか?」
「それを聴いてどうするの?あなたには何も関係のないことよ」
ぎすぎすした声を出してしまったローズマリーが咳払いをして水を一気に飲み干すと、オーディンは潔く頭を下げ、手を伸ばして固く拳を握りしめていたローズマリーの拳に触れた。
「すみません、興味があったので。怒らせてしまいましたか?」
「いいのよ。でも私の態度でもうわかっちゃったでしょ?」
意外とあっさりとしていて、逆に少し拍子抜けをしながらも背もたれに寄りかかると豪奢なシャンデリアを見上げながらひとつ息を吐いた。
「コハク様はあなたの気持ちを知っているのですか?」
大賢者は柔らかい笑みを掃き、瞳を伏せた。
自室にローズマリーを誘ったオーディンは、背中にそっと投げかけられた声に苦笑して振り返った。
「そうですか?いつも通りの顔だと思いますが」
「私だって長いこと生きてるのよ。見くびらないでほしいわね」
ソファに座り、クリスタル製の水差しから水をグラスに移すと、いつも携帯している粉薬を取り出し、オーディンが見つめる中それを苦そうにして飲んだ。
「それはコハク様が作った薬ですか?」
「ええ、そうよ。追い出した後もずっと定期的に家の前に“落ちてた”の。声をかければいいのにそれができなくて、いつもしばらく家の前に立ってたわ。ふふ、可愛いわよね」
「あなたから声をかければよかったでしょうに」
「私が追い出したのよ。出て行ってほしかったから、追い出したの。だから招き入れるはずがないわ」
コハクとローズマリーの馴れ初めはあまり聞いたことがない。
コハクはそれを話したがらなかったし、今まであまり興味はなかったのだが…
ローズマリーという女性に興味を持ったオーディンはソファに座ると上体を倒して前のめりになった。
「愛していたから…ですか?」
「…さあ、どうかしら。私はコハクが赤ちゃんだった頃から知ってるのよ。そりゃ愛情はあったけど」
「母性…ではなく愛情でしょう?愛しいと思い、そして願った通り、成長したコハク様に愛された。そして追い出した。追い出す必要がありましたか?」
「それを聴いてどうするの?あなたには何も関係のないことよ」
ぎすぎすした声を出してしまったローズマリーが咳払いをして水を一気に飲み干すと、オーディンは潔く頭を下げ、手を伸ばして固く拳を握りしめていたローズマリーの拳に触れた。
「すみません、興味があったので。怒らせてしまいましたか?」
「いいのよ。でも私の態度でもうわかっちゃったでしょ?」
意外とあっさりとしていて、逆に少し拍子抜けをしながらも背もたれに寄りかかると豪奢なシャンデリアを見上げながらひとつ息を吐いた。
「コハク様はあなたの気持ちを知っているのですか?」
大賢者は柔らかい笑みを掃き、瞳を伏せた。