魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
いつもはつけないのだが、ラスの首筋に花弁のようなキスマークを沢山散りばめた。
所有印をつけて自分のものだということを知らしめてもなお不安が拭えない。
そしてなお、求めても求めても求め足りず、隣で眠っているラスの肩にキスをした。
「ん…、コー、喉渇いた…」
「ごめん、起こしたか?レモネード作ってきてやるよ。ちょっと待ってろ」
絨毯に落ちていた黒いパンツと黒いVネックのセーターを着て部屋を出て、薄暗い廊下を歩き、階段を下りた。
そしてキッチンへ行くと…そこには先客が居り、目が合うと笑いかけてきた。
「あら、1人?ラス王女はどうしたの?」
「寝てる。チビにレモネード作ってやろうと思ってさ。つか王女って呼ぶなよ、もう王女じゃなくなるんだからな」
先客…ローズマリーは、ワイングラスを傾け、赤ワインを揺らすとグラス越しにコハクを見つめた。
「まだ王女でしょ。…また疲れさせるようなことをしたの?」
「そりゃまあ。チビが早くガキを作りたいっていうからさあ。ふふふふ、可愛い奴」
「ようやく手に入れたいものも手に入れたし。これでもう手に入らないものは何ひとつなくなったわね」
声色に剣がこもり、レモンを絞っていたコハクの手が止まった。
ぴりぴりしてしまったローズマリーは焦りながら立ち上がり、窓辺に寄ると空を見上げた。
「なんだよ、女の嫉妬は見苦しいぜ」
「嫉妬なんかしてないわ、自惚れないで」
「嘘つけ。お師匠のことはこれでもよく知ってるつもりなんだけど」
――男女の関係だったのは、もう何百年も前のこと。
それでも持病を持つローズマリーのために、カイから倒される直前までは発作を抑える薬を作って家の前に置いて行った日々と、ローズマリーと暮らした日々を忘れたことはない。
だが今でも断言できる。
あれは、“愛”ではなく、ただの“独占欲”だったのだと。
「オーディンがやけにお師匠のことを気にしてたぜ。気に入ったらくっつきゃいい。そろそろ幸せになれよ」
「自分が幸せになったからってそれを私に押し付けないでほしいわね」
ああ言えばこう言う。
そのやりとりの懐かしさに笑みが零れた。
所有印をつけて自分のものだということを知らしめてもなお不安が拭えない。
そしてなお、求めても求めても求め足りず、隣で眠っているラスの肩にキスをした。
「ん…、コー、喉渇いた…」
「ごめん、起こしたか?レモネード作ってきてやるよ。ちょっと待ってろ」
絨毯に落ちていた黒いパンツと黒いVネックのセーターを着て部屋を出て、薄暗い廊下を歩き、階段を下りた。
そしてキッチンへ行くと…そこには先客が居り、目が合うと笑いかけてきた。
「あら、1人?ラス王女はどうしたの?」
「寝てる。チビにレモネード作ってやろうと思ってさ。つか王女って呼ぶなよ、もう王女じゃなくなるんだからな」
先客…ローズマリーは、ワイングラスを傾け、赤ワインを揺らすとグラス越しにコハクを見つめた。
「まだ王女でしょ。…また疲れさせるようなことをしたの?」
「そりゃまあ。チビが早くガキを作りたいっていうからさあ。ふふふふ、可愛い奴」
「ようやく手に入れたいものも手に入れたし。これでもう手に入らないものは何ひとつなくなったわね」
声色に剣がこもり、レモンを絞っていたコハクの手が止まった。
ぴりぴりしてしまったローズマリーは焦りながら立ち上がり、窓辺に寄ると空を見上げた。
「なんだよ、女の嫉妬は見苦しいぜ」
「嫉妬なんかしてないわ、自惚れないで」
「嘘つけ。お師匠のことはこれでもよく知ってるつもりなんだけど」
――男女の関係だったのは、もう何百年も前のこと。
それでも持病を持つローズマリーのために、カイから倒される直前までは発作を抑える薬を作って家の前に置いて行った日々と、ローズマリーと暮らした日々を忘れたことはない。
だが今でも断言できる。
あれは、“愛”ではなく、ただの“独占欲”だったのだと。
「オーディンがやけにお師匠のことを気にしてたぜ。気に入ったらくっつきゃいい。そろそろ幸せになれよ」
「自分が幸せになったからってそれを私に押し付けないでほしいわね」
ああ言えばこう言う。
そのやりとりの懐かしさに笑みが零れた。