魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「チビー、レモネード作って来てやったぞ」


「あ、コー…遅かったね」


目を擦りながらむくりと起き上がった拍子にぽろり。

魔王の手からはレモネードがぽろりと落ちそうになり、慌ててしゃがみこんだ。


「ち、チビ!ガウン着なさい!俺自身が暴走しそう!」


「?うん、わかった」


「落ち着け俺。頑張れ俺!いや、頑張るな俺!」


呪文のようにぶつぶつ何かを唱えながらガウンを羽織ったラスの隣に座ると、湯気を立てて甘い香りのするレモネードを渡し、ラスはそれを両手で持つとふうふう息を吹きかけて一口飲んだ。


「美味しいっ」


「だろ?チビのために愛情こめて作ったんだぜ」


「でも遅かったね、途中でまた寝そうになっちゃった」


「ああ、先客が居たからちょっと話しこんでたんだ。チビ、俺にもちょうだい」


こくこくと飲んでいたラスの唇にキスをして寝食し、口移しでレモネードを呑むと、甘くて少し酸っぱい味が口全体に広がり、またコーフンしかけて唇を離した。


「ねえコー、明日も私はなんにもしなくっていいの?」


「明日は城内を解凍して王たちを弔う。小僧たちはいつも通り各国を回って宣伝!俺とチビはいっつも一緒!チビには俺を励ますという大事な係をしてもらうよ」


「うん、わかった。沢山励ましてあげるね」


レモネードをベッドサイドのテーブルに置いて一緒に寝転がり、腕枕をしてやると、ラスが腕の中に転がり込んできてぎゅっと抱き着いた。


「ずっと一緒に居てね。今度こそ約束して」


「ずっと一緒に居るって。誓うから。だからチビも俺のことを信用して、俺が何をしても信用してくれ」


「してるよ。ねえコー、ラスって呼んでほしいな。駄目?」


上目遣いで見つめてきたラスの細い身体を抱きしめ、ありったけの愛をこめて耳元で囁いた。



「ラス…愛してる。お前のためならなんでもしてやる。世界征服がお望みならいつでも言えよ」


「ふふっ、世界なんて要らない。私はコー…コハクが居ればいいの。それだけで幸せ」



鼻をつまみ合い、抱き合い、魂を交わす。

永遠で在れるように、祈った。
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