魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
スノウから“相談がある”と打ち明けられたラスは嬉しさを隠すことができずにスノウに付き纏っていた。


「ねえスノウ、今ならコーが居ないから話せるよ?今聴いてもいいよ?今聴かせてほしいな、駄目かな?」


「ゆっくり腰を落ち着けて話したいわ。とっても悩んでることだから立ち話で済ませたくないの」


「そっか、そうだよね、うん、わかった!じゃあ夜絶対行くから待っててねっ」


――コハクに愛され、コハクと両想いになったラスはまぶしいほどに美しく、仄暗い殺意と嫉妬を抱き続けているスノウはそれを綺麗に隠してにっこりほほ笑むと、ラスたちから離れた場所で掃除を始めた。

だが元々エリノアとレイラはラスをどうこうしようという思いはなく、ただ純粋にコハクに誉めてもらいたいという思いのみ。

よってスノウが時々見せる能面のような無表情を危険視し、スノウにばれないように鼻歌を唄って上機嫌に花瓶を磨いているラスに近寄ると声をかけた。


「ラス王女…スノウと仲が良いみたいだけど…大丈夫?」


「え、何が?仲良しだよ、それに…、あっ、これ以上は言えないの。約束したからっ」


慌てて両手で口を覆ったラスは純粋にスノウを慕っているように見えたので、エリノアとレイラは顔を見合わせ、ひとつだけ警告をした。


「…コハク様の傍から離れないでね、絶対よ」


「?うん、わかった」


にこにこ笑うラスは幸せに溢れている。

王女という身分を捨ててコハクと生きることを選び、こんな風に自らの手で掃除をすることも本来ならなかったことだろう。

だが手が汚れても、ドレスの裾が汚れても、一向に気にする風でもなく楽しそうにしている。


悪い気分にはなってほしくないので2人も作業に戻り、数時間の間黙々と掃除を続けていると――


「チビー、帰るぞー!早く触らせろー!」


「あ、コーだ。ねえ、今日は3人を歓迎してパーティーしよ?みんなで踊ったり、美味しいもの沢山食べよ!」


「ええ、ありがとう」


スノウを除き笑い合っていると、禁断症状まっしぐらの魔王が顔を出し、ラスを発見すると眉間に寄っていた皺が一気に無くなった。


「チビ」


「コー」


ほっとした笑顔を見せた。
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