魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「俺さあ、今夜ちょっと用事あるけどチビはみんなと一緒に居ろよ」


「え?どこかに行くの?どうして?」


宣言通りラスを丸洗いして綺麗にしてやると後ろ抱っこしたまま一緒にバスタブに入り、細い指に桜色のマニキュアを塗ってやりながら唸った。


「んー、まあちょっとだけ用があるんだ。あ、ほら、改造だよ改造」


「魔物さんの?じゃあ邪魔しない方がいいよね。うん、わかった、グラースたちと遊んでるね」


むらむらな魔王は鼻息荒く泡の下のラスの裸を泡の隙間から見ようと必死になっていたが…なにぶん量を間違えたらしく、一向に見えない。

そして肝心のラスは普通の女ならこのままベッドに…というシチュエーションでもそれを全く感じておらず、綺麗に塗ってもらった指に嬉しそうに息を吹きかけていた。


「寂しいからなるべく早く帰ってきてね。あ、コーの指にも塗ってあげる」


「おいチビ、俺をヘンタイにする気か?あ、違った。もうヘンタイだった」


ヘンタイには間違いないので自分で納得しつつ、向きを変えて対面形式になったラスがタオルでコハクの指を拭うと真剣な面持ちでマニキュアを塗り始めたが…いかんせん元々不器用なので、ずれまくり。


「んーーー、うまくできないっ」


「いいって、そのまま続行ー。いやあ、絶景絶景」


何度も胸の谷間に視線を遣ってコーフンしつつ、ラスなりに綺麗にマニキュアを塗ると突然ざばっと立ち上がり、魔王、目がちかちか。


「ちょ、チビ!?全部見えてんだけど!!」


「お腹空いた。コー、先に行って食べてるね。それ、取っちゃ駄目だよ」


超眼福な魔王はそのまま浴槽の底に沈み、悶えまくり。


「あいつ、やべえ!あー俺やばかった!ケダモノになるとこだった…」


…元々からしてケダモノだったのだが、その事実を綺麗に忘れ去っていた魔王は濡れた真っ黒な髪をかき上げ、腰にタオルを巻くとバスルームを出て首を鳴らした。


「俺の今夜の目標。スノウとは変なことにはならねえ。よし、決まり!」


――もうラスしか愛せない。

ラスしか抱きたくない。

ラスの笑顔をずっと見ていたい。


魔王、改心なるか?
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