魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
コハクもスノウもダンスがとても上手く、ただコハクの顔が不機嫌さ全開だったが、見ていてとても絵になる光景が展開されていた。

最初はよそ見ばかりして気が散っていたラスもだんだんうずうずしてきて、エリノアとレイラの手を取るとぐいぐいと中央ホールへと引っ張り出した。


「一緒踊ろうよ。コーには負けないんだからっ」


「待てチビっ、もうすぐ終わるし俺とチビが…」


「リロイ!リロイはティアラと踊ってね」


「ら、ラス、待って、私は…」


焦るティアラの言い分は無視し、さらにステップも無視したはちゃめちゃなラスの踊りはレイラたちを笑わせ、魔物たちがラスに合わせて陽気な曲に切り替えると、場は笑い声に包まれた。


「ラス王女、私の脚を踏んでるわっ」


「レイラだってさっき私の脚踏んだよっ」


手を繋ぎ、ぐるぐると回りながらも笑い声の止まないラスは明るく、可愛らしく…コハクはとうとうスノウの手を離すとラスの腰を攫って抱っこし、手でしっしとレイラたちを追い払った。


「チビと踊るのは俺なの!」


「やんっ!レイラたちと踊るのっ」


「なに今の!むっちゃ可愛かったし!」


でれの止めどない魔王がでれでれし始め、レイラとエリノアは笑いながらその場を離れてテーブルに戻ったが、スノウは静かに殺意を燃え上がらせ、無言のまま身を翻して食卓の間から出て行き、ラスの表情を曇らせた。


「コー…」


「疲れたんだろ、放っとこうぜ。それよりこっちに集中しといた方がいいぞー」


「きゃー!」


レイラたちと踊っていた時よりも何倍も速いスピードでくるくる回り、必死にコハクにしがみついているラスがまた笑顔に戻り、リロイはティアラの前で片膝をつくと手を取り、習わしに則って真っ白な甲にキスをした。


「り、リロイ…」


「僕と一曲踊って頂けませんか?」


その会話を盗み聞きしていたコハクがぱちんと指を鳴らすと今度はムーディーでしっとりとした曲を奏で、ラスがにこにこしながらコハクの腰に抱き着いた。


「リロイたち、うまくいくといいな」


「そだな、時間かかると思うけど」


長年抱えた想いは早々消えることはない。
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