魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「じゃあチビ、俺行くし」


「うん、わかった。グラースたちとお喋りしてるね」


「あんまやんちゃするんじゃねえぞ」


カットした林檎を食べていたラスの頬にキスをすると頭を撫で、コハクが部屋を出て行った。

唯一男のリロイは多少居心地の悪い思いをしながらも、コハクがラスを置いてどこへ行ったのを考えていると…


「恐らくスノウの所へ行った。…ラスに言うか?」


「…どうしてスノウの所へ?」


「わからない。だがラスを会わせない方がいい。…スノウを追い出すか?」


「ラスはそれを嫌がるでしょう。少し様子を見ましょう」


「お前は本当に気苦労の絶えない男だな」


「ふふ、よく言われます」


リロイは睫毛にかかった金の髪を指を払いながら、すっかり打ち解けたエリノアとレイラ、そしてティアラを加えて楽しそうに話をしているラスを見つめた。


――綺麗になって、想いも増したけれど…そんなラスを幸せにすることはできない。

今後はコハクの花嫁になり、一方は永遠の若さを手に入れ、一方は緩やかに歳を取ってゆく――

いつか別れは来るのだから、それが少し早くなるか遅くなるかの違い。

たった、それだけのこと。


「ねえねえ、今何時?コー遅いな、魔物さんの改造に時間がかかってるのかな」


「改造?影は魔物の改造に行ったの?」


「うん、そう言ってたよ。私ちょっと見て来るね」


まだ1時間も経っていないのにラスがフォークを置いて立ち上がったので、嫌な予感がした面々は口々にラスを止めようとした。


「邪魔をしちゃ駄目よラス」


「そうだよ、影から怒られるよ」


「でも…」


ぐずっていると、オーディンと2人でワイングラスを片手に壁の花になっていたローズマリーがくすりと笑うと皆とは反対の意見を述べた。


「行くといいわ。コハクも喜ぶと思うし」


「そう?そだよね、じゃあ私行って来るね」


皆に手を振り、ラスが足早に居なくなった後、オーディンはワイングラスを揺らしながら首を傾けてローズマリーの顔を覗き込んだ。


「どうするつもりなんですか?」


その問いには答えなかった。
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