魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
スノウと密会する形となってしまったコハクは、スノウに会いに行くのが本当に嫌で仕方がなくて、地下の実験室に寄ってベッドでごろ寝をしていた。


もちろんスノウを抱くつもりはないが、ラスに隠れて…というのがネックになっている。

ラスにはまだ話していないことは沢山あったのだが、これからの永遠ともいうべき長い人生を共に歩むのだから、その緩やかに流れる時の中で打ち明けていけばいいと考えていたコハクはため息をつき、がりがりと黒い髪をかき上げた。


「ちっ、行くしかねえか」


決心して実験室を出て螺旋階段を上り、客室のフロアに着くと、スノウが普段つけている林檎の香りのする香水が漂う部屋の前に立ち、ノックした。


「おいスノウ、来たぞ。用があるなら早く済ませ…」


「いらっしゃい、コハク様」


言葉が途中で止まったのは…スノウが素肌にガウン1枚の姿で、しかも同じ黒髪は濡れていて、まさに風呂から上がってきたばかりだと言わんばかりの出で立ちだったからだ。

いくらラス命だとはいえ、今までが色ぼけの日々を過ごしてきた魔王は口角を上げて腕を組むとドアにもたれ掛った。


「なんだそれ。俺を誘惑しようとしてんのか?」


「もし私が誘惑したら…愛してくれるの?」


「んなわけねえだろ、俺はチビしかいらねえんだ。で?なんか用なんだろ」


スノウが微笑を浮かべて部屋の中へ入るように促してきたので、密室にならないようにリロイを真似してドアを少しだけ開けて中へ入ってソファに腰かけると、スノウも猫のような動作でコハクの隣に腰かけた。


テーブルには様々な種類の酒が並び、長居をするつもりのないコハクは、すう、と赤い瞳を細めると、ソファにふんぞり返った。


「早く用件言えって。さっきの質問が用件なら帰るからな」


「違うわ。コハク様…」


艶めかしい動作で膝に触れてきた白い手を見下ろし、何の感情もなくほぼ無表情でスノウを見つめると…急に膝に乗ってきた。


…ラスのように。


ラスがそうしたならば“爆発する!”とお決まりの台詞を吐いてコーフンする魔王は、近付いてくるスノウの顔を避けるように肩を押して接近を阻止し、眉間に皺を寄せた。


そしてスノウの本音が明かされる。
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