魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
スノウはコハクの切れ長の赤い瞳をひたと見据えたまま、男なら誰もが吸い付きたくなるような形の良い美しい唇を開いた。


「私にかけた呪いを解いて。私は…あなたから解放されたいの」


「…はあ?」


素っ頓狂な声を上げたコハクが両腕を広げて背もたれに手を投げ出すと、喉仏をくつくつと動かして声を出さずに笑った。


「俺、お前に呪いなんかかけたっけか?」


「かけたわ。私はあなたに抱かれた時から今まで…あなたのことしか考えられなくなった。あなたが私に呪いをかけたのよ。あなたが私に魔法を…」


「ああ、あれか。ちなみに俺がお前を呪ったのは、“チビをいじめたり酷い目に遭わせると死よりもつらい苦痛がお前を襲うだろう”だ。とんだお門違いだぜ」


「そ、そんな…!でも!コハク様に会える日を指折り数えて…王子や7人の小人とも別れて…ずっとコハク様をお待ちしていたの!あなたが呪いをかけなかったら…」


必死にコハクの言葉を打ち消そうとするも、実際コハクは自分に夢中になるように、など恋の呪縛をかけておらず、辟易した表情になると瞳を見開いて唇を震わせるスノウににやりと笑いかけた。


「俺に夢中になったのか?残念だな、俺はチビに夢中なんだ。お前なんかに夢中にならねえし」


「でも…!私はあなたの孤独を理解してあげられる!あなたは私と似てるもの。愛が欲しくて…孤独が悲しくて…だから愛欲に溺れて…」


「たった1度俺に抱かれた位で俺の何がわかるんだよ。お前には本当の俺を1%も見せてねえし、今後見せるつもりもねえ」


――打ちひしがれたスノウは一瞬瞳を潤ませたが…肩で息をつくと、ガウンのベルトを外て脱ぎ、床に落として素肌をさらした。


コハクは一度視線でそのスノウの肌を撫でたがすぐに視線を上げ、スノウの顎を少し強めに掴んだ。


「どういうつもりだよ。お前の裸なんか見てもコーフンなんかしねえんだよ」


「さあ、どうかしら…。コハク様…愛しているわ」


――そして強引に唇が重なり、強引にコハクの手を取って腰に導かせ、強引に舌を絡めた。


コハクは一切それに応えなかったが…



かたん。



ドアの方から、音がした。
< 248 / 728 >

この作品をシェア

pagetop