魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
目を合わさずずっと手の甲を指で掻いているコハクは明らかにいつもとは様子が違う。
…自分が傷ついたのよりも、きっと何倍も何十倍も…コハクを傷つけてしまった。
それをものすごく後悔していながらも、“ごめんなさい”以上の謝罪の言葉をラスは知らず、でもコハクに触りたくて…もっと話したくて、コハクの前にぺたんと座って顔を覗き込んだ。
「コーこそ…私のこと…嫌いになった?疑ってばっかの私なんか、もう…」
「そんなことねえって。チビが俺と距離を取りたいって言ったんだろ?なら俺は耐えるしかねえ。…こうして少し話すのも駄目なのか?」
ラスは一生懸命言葉を探しながら、コハクの手の甲が血で滲んでいるのを見た。
必死に…必死に耐えているのだと。
自分の決断を尊重して耐えてくれているのだと知り、ラスはコハクに向けて腕を伸ばし、空中で留めた。
「少しなら…。それに…少しなら…触っても…いいよ?」
――本当は自分がコハクに触りたいのに――
心臓が痛いほどにどきどきしていると、しばらくラスの白く手折れそうな手を見つめていたコハクは、ラスの人差し指だけを優しく握った。
「そっか、わかった。また俺と一緒に居たいって思えたら…俺の部屋に来てくれ。それまで待つから」
「コー…、コー、待って…っ」
ラスを振り切るように早々に話を切り上げて立ち上がると、とうとう嗚咽が漏れ…抱きしめてもらいたいのに、そうしてくれないのは全部自分のせいで…距離を置きたいと言った自分のせいで…ラスは自身の身体を抱きしめてうずくまった。
コハクが静かに部屋を出て行くと、入れ替わりにリロイが入って来てラスの隣で膝を折り、背中を撫でた。
「…ちゃんと話せた?」
「……うん…」
「…僕はいつでもラスの味方だよ。君が望むようにしてあげるから…なんでも言ってね」
「…うん…ありがと…」
――リロイには頼れない。
頼ってしまえばまたコハクを傷つけるし、ティアラにも申し訳ない。
ラスはただ必死に耐え、握ってくれた人差し指を手で包み込むとしばらく顔を上げられないでいた。
…自分が傷ついたのよりも、きっと何倍も何十倍も…コハクを傷つけてしまった。
それをものすごく後悔していながらも、“ごめんなさい”以上の謝罪の言葉をラスは知らず、でもコハクに触りたくて…もっと話したくて、コハクの前にぺたんと座って顔を覗き込んだ。
「コーこそ…私のこと…嫌いになった?疑ってばっかの私なんか、もう…」
「そんなことねえって。チビが俺と距離を取りたいって言ったんだろ?なら俺は耐えるしかねえ。…こうして少し話すのも駄目なのか?」
ラスは一生懸命言葉を探しながら、コハクの手の甲が血で滲んでいるのを見た。
必死に…必死に耐えているのだと。
自分の決断を尊重して耐えてくれているのだと知り、ラスはコハクに向けて腕を伸ばし、空中で留めた。
「少しなら…。それに…少しなら…触っても…いいよ?」
――本当は自分がコハクに触りたいのに――
心臓が痛いほどにどきどきしていると、しばらくラスの白く手折れそうな手を見つめていたコハクは、ラスの人差し指だけを優しく握った。
「そっか、わかった。また俺と一緒に居たいって思えたら…俺の部屋に来てくれ。それまで待つから」
「コー…、コー、待って…っ」
ラスを振り切るように早々に話を切り上げて立ち上がると、とうとう嗚咽が漏れ…抱きしめてもらいたいのに、そうしてくれないのは全部自分のせいで…距離を置きたいと言った自分のせいで…ラスは自身の身体を抱きしめてうずくまった。
コハクが静かに部屋を出て行くと、入れ替わりにリロイが入って来てラスの隣で膝を折り、背中を撫でた。
「…ちゃんと話せた?」
「……うん…」
「…僕はいつでもラスの味方だよ。君が望むようにしてあげるから…なんでも言ってね」
「…うん…ありがと…」
――リロイには頼れない。
頼ってしまえばまたコハクを傷つけるし、ティアラにも申し訳ない。
ラスはただ必死に耐え、握ってくれた人差し指を手で包み込むとしばらく顔を上げられないでいた。