魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
スノウの埋葬は秘密裏に行われた。

全てはラスの心情を慮ってのことだったが、努めて明るく接しようとし、コハクを誘惑したスノウとも仲良くしようと考え、昨日掃除していた屋敷で窓を拭いていたエリノアに声をかけた。


「あの…スノウがどこに居るか知ってる?ここに来てないよね?」


「え…?あの…スノウは…帰ったの。あなたに“ごめんなさい”って謝ってたわ。だからもう…ここには居ないわ」


「そう…なの?そっか…うん、わかった。じゃあお掃除始めよっ」


――スノウの最期は生前の美しかった美貌を老婆のように干からびさせ、見るも無残なものとなった。

コハクの指示によって魔物たちがスノウを丁重に埋葬し、リロイたちはラスが眠っている間にスノウを弔った。


…同情すべき余地はないが…2人の間に確かな亀裂を残し、干からびた顔には満足げな表情が浮かんでいたようにも見えた。


皆で話し合い、ラスに真実は告げない方向でいこうと決めた。

ラスにはいつも笑っていてほしいのだ。

皆が望むのはただ一心、それだけ――


エリノアとレイラは時々ラスを盗み見しながら掃除を続けたが、時々そわそわするような仕草を見せ、時々外に出ては城の方を見つめ、俯く。

何度もそれを繰り返し、愛し合いながらも距離を置いた2人の決断を見守ることしかできないレイラたちはラスを明るくしようと声をかけ、馬鹿を言い合い、ラスを笑わせた。

そうしているうちにだんだん気分が晴れてきたのかみるみる明るさを取り戻し、昼を過ぎた頃にはいつものラスに戻ってくれた。


「ラス」


「あれっ?ティアラ…どうしたの?今日はもう終わったの?」


「いえ、みんなでお昼ご飯を食べようと思って戻ってきたの。城の庭で一緒に食べましょ」


心配し、気遣ってくれたティアラとリロイが戻って来て、まだフローズン退治に追われているグラースとも合流し、きゃっきゃと騒ぎながら城の庭に着いた時には…コハクがごろ寝し、ラスと目が合うとがばっと起き上がった。


「あの…コー、一緒にご飯食べよ」


「お、おう」


ぎくしゃくとぎこちなく、コハクの隣に座らず少し離れた場所に座った。


コハクを見つめ直す。

自分を、見つめ直す。
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