魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
それなりに体力はつけていたつもりだったが…
コンソメスープの入った水筒を両手で持って飲みつつ、ラスはうつらうつらし始めてしまった。
…元々は、生粋のお嬢様育ちなのだ。
こうして掃除をするために走り回ったり、埃まみれになったり、手を土まみれにしたり…絶対することなどなかったはずなのに――
「ラス、少し横になった方がいいよ。起こしてあげるから」
「ううん…大丈夫…でも…ちょっとだけいいかな…」
こてんと横になるとすぐに寝息が聴こえ、コハクは終始黙ったまま指を鳴らすと、ラスの影からピンク色の毛布が勝手ににゅっと現れた。
本来なら…膝枕をしてやったり毛布を身体にかけてやったり至れり尽くせりし放題なのに、そうせずに真顔でラスの寝顔を見つめている。
いつもはよく動く唇も真一文字に引き結ばれ、顎でリロイに毛布をかけてやるように指図をすると、ティアラが口を開いた。
「いつまで続けるつもり?」
「は?俺のせいだって言いてえのか?決めたのはチビだ。…俺じゃねえ」
「でも…ラス王女はずっとコハク様のことを気にかけていました。コハク様…ラス王女になにか優しい言葉をかけてあげて下さい。こんなにくたくたになるまで頑張って…可哀そうです」
「…上に戻る。チビが起きたらお前らも戻れ。あと、俺とチビの問題に首を突っ込むな。俺を怒らせると痛い目に遭わせてやるからな」
――コハクの瞳が真っ赤に輝き、1秒たりとも目を合わせてしまえば呪縛に囚われる気がしたティアラはすぐに顔を背けるとラスの隣に移動し、頬にかかった金の髪を払ってやった。
「…可哀そうよ」
「…もう行く。サラマンダー!」
唇に人差し指をあてて口笛のように音を鳴らすと、上空で待機していたサラマンダーが再び盛大な炎を吐き、その轟音でラスが目を覚ました。
「あ…、寝ちゃってた…!ごめんね、早く行こっ」
目を擦りながら起き上がると、コハクがかけてくれた毛布に目を落とし、去って行く後ろ姿のコハクを見つめた。
「…ねえティアラ…」
「どうしたの?」
コハクの細い背中を見つめながら、囁いた。
「なんで…こんなに苦しいのかな」
それが、恋――
コンソメスープの入った水筒を両手で持って飲みつつ、ラスはうつらうつらし始めてしまった。
…元々は、生粋のお嬢様育ちなのだ。
こうして掃除をするために走り回ったり、埃まみれになったり、手を土まみれにしたり…絶対することなどなかったはずなのに――
「ラス、少し横になった方がいいよ。起こしてあげるから」
「ううん…大丈夫…でも…ちょっとだけいいかな…」
こてんと横になるとすぐに寝息が聴こえ、コハクは終始黙ったまま指を鳴らすと、ラスの影からピンク色の毛布が勝手ににゅっと現れた。
本来なら…膝枕をしてやったり毛布を身体にかけてやったり至れり尽くせりし放題なのに、そうせずに真顔でラスの寝顔を見つめている。
いつもはよく動く唇も真一文字に引き結ばれ、顎でリロイに毛布をかけてやるように指図をすると、ティアラが口を開いた。
「いつまで続けるつもり?」
「は?俺のせいだって言いてえのか?決めたのはチビだ。…俺じゃねえ」
「でも…ラス王女はずっとコハク様のことを気にかけていました。コハク様…ラス王女になにか優しい言葉をかけてあげて下さい。こんなにくたくたになるまで頑張って…可哀そうです」
「…上に戻る。チビが起きたらお前らも戻れ。あと、俺とチビの問題に首を突っ込むな。俺を怒らせると痛い目に遭わせてやるからな」
――コハクの瞳が真っ赤に輝き、1秒たりとも目を合わせてしまえば呪縛に囚われる気がしたティアラはすぐに顔を背けるとラスの隣に移動し、頬にかかった金の髪を払ってやった。
「…可哀そうよ」
「…もう行く。サラマンダー!」
唇に人差し指をあてて口笛のように音を鳴らすと、上空で待機していたサラマンダーが再び盛大な炎を吐き、その轟音でラスが目を覚ました。
「あ…、寝ちゃってた…!ごめんね、早く行こっ」
目を擦りながら起き上がると、コハクがかけてくれた毛布に目を落とし、去って行く後ろ姿のコハクを見つめた。
「…ねえティアラ…」
「どうしたの?」
コハクの細い背中を見つめながら、囁いた。
「なんで…こんなに苦しいのかな」
それが、恋――