魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
深夜に目が覚めた時――そこはグリーンリバーの自室で、ぼうっとしたまま辺りを見回すと、テーブルの上にはサンドウィッチやフルーツ、そして耐熱用のポットに蜂蜜入りのあたたかい紅茶が入っていた。
「…コー…」
誰が用意してくれたかはすぐにわかった。
そして、ここに運んでくれたのも誰だかは、すぐにわかった。
胸がきゅんきゅんして、コハクと少し離れたことでコハクの優しさに触れ、居ても経っても居られなくなったラスは部屋を抜け出ると、少し躊躇しながら隣室のコハクの部屋のドアノブをそっと回した。
…部屋は暗く、目を凝らすとコハクが横向きになってベッドで眠っている姿が目に入った。
恐らく…自分の非ではないほどにコハクは疲れているはずだ。
だがそれを微塵も感じさせず、自分の世話までしてくれて…
「コー…ありがと…」
正面に回り込むと膝をついて骨ばった手を握り、寝顔に見入るといつものように抱きしめて眠ってもらいたかったが…距離を置こうと言ったのはこちらからなのだ。
また泣きそうになりながら必死に耐えて、コハクの頬にキスをすると部屋を出て自室に戻り、用意してくれたサンドウィッチを食べ、紅茶を飲み、また眠りについた。
――そして…
「や、べ…っ、チビの奴…何してくれてんだよ…!」
狸寝入りをしていた魔王がベッドの上で両手で顔を覆い、転げ回っていた。
ままごとのような恋愛――
今まで経験がなく、ラスが距離を置きながらもこうして会いに来てくれて、キスをしてくれること…それがものすごく嬉しくて、距離を置いたのは正解だったかもしれないとも思えてきた。
まだ頬に唇の余韻が残り、指で頬を伝うと、明日は少し勇気を出してラスに頼みごとをしようと決めた。
ラスに出会う前の自分なら…一晩を過ごす女など数えきれないほど居たが…
今は独りで眠り、息を潜めて隣室のラスを想うだけで心が満たされる。
そしていつかは…この腕の中に戻って来てくれるはずだ。
「俺…頑張ろ。頑張れ俺」
誰もが逸らすこの赤い瞳を真っ直ぐに見つめてくれるのは、ラスだけ。
想うだけで、満たされて行く。
「…コー…」
誰が用意してくれたかはすぐにわかった。
そして、ここに運んでくれたのも誰だかは、すぐにわかった。
胸がきゅんきゅんして、コハクと少し離れたことでコハクの優しさに触れ、居ても経っても居られなくなったラスは部屋を抜け出ると、少し躊躇しながら隣室のコハクの部屋のドアノブをそっと回した。
…部屋は暗く、目を凝らすとコハクが横向きになってベッドで眠っている姿が目に入った。
恐らく…自分の非ではないほどにコハクは疲れているはずだ。
だがそれを微塵も感じさせず、自分の世話までしてくれて…
「コー…ありがと…」
正面に回り込むと膝をついて骨ばった手を握り、寝顔に見入るといつものように抱きしめて眠ってもらいたかったが…距離を置こうと言ったのはこちらからなのだ。
また泣きそうになりながら必死に耐えて、コハクの頬にキスをすると部屋を出て自室に戻り、用意してくれたサンドウィッチを食べ、紅茶を飲み、また眠りについた。
――そして…
「や、べ…っ、チビの奴…何してくれてんだよ…!」
狸寝入りをしていた魔王がベッドの上で両手で顔を覆い、転げ回っていた。
ままごとのような恋愛――
今まで経験がなく、ラスが距離を置きながらもこうして会いに来てくれて、キスをしてくれること…それがものすごく嬉しくて、距離を置いたのは正解だったかもしれないとも思えてきた。
まだ頬に唇の余韻が残り、指で頬を伝うと、明日は少し勇気を出してラスに頼みごとをしようと決めた。
ラスに出会う前の自分なら…一晩を過ごす女など数えきれないほど居たが…
今は独りで眠り、息を潜めて隣室のラスを想うだけで心が満たされる。
そしていつかは…この腕の中に戻って来てくれるはずだ。
「俺…頑張ろ。頑張れ俺」
誰もが逸らすこの赤い瞳を真っ直ぐに見つめてくれるのは、ラスだけ。
想うだけで、満たされて行く。