魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
翌朝いつものように皆で朝食を摂り、それぞれが回った街や村、国の情報を共有している時、ラスは走り回るフローズンを追いかけて庭の噴水の前でようやく捕まえ、花畑の上に座っていた。


「めっ。大人しくしてなきゃ駄目でしょ」


頭を撫でてやりながら空を見上げ、いつも快晴のグリーンリバーの頭上に広がる虹色のヴェールを見つめながらぼーっとしていると、コハクが首をかきながら声をかけてきた。


「チビ、頼みごとがあるんだけど聴いてくれるか?」


「え…、うん、どうしたの?」


ぎこちなく隣に腰を下ろし、それを口にするまでにかかった時間が約5分。

その間ラスはじっとコハクを見つめ、綺麗な唇が開いたり閉じたりしているのを見て噴き出した。


「ふふっ」


「…なんだよ」


「コーが面白い顔してるからおかしくて笑っちゃった」


「世界一カッコイイ男に“面白い顔”ってなんだよ、いじめるぞ」


軽口をたたき合っているとようやく緊張がほぐれ、ラスの膝の上に置かれた手をちらちら見ながら言いにくそうに、それを口にした。



「1日1回…ぎゅってさせてほしいんだけど。…駄目か?」


「ぎゅっ?私を?どうして?」


「エネルギー補給。俺の動力はチビだからさ。エネルギーが切れると頑張れねえし。1日1回でいいんだ。や、無理ならいいんだけど」



…いつもはもっとすごいことをするくせに、恥ずかしがり、照れまくり、耳を赤くしているコハクにまたきゅんとして、それがラスにも伝染してしまいながら俯き、頷いた。


「うん…いいと…思う」


「サンキュ。じゃあ早速」


――耳に金の髪をかけて恥らうラスを膝に乗せてぎゅっと抱きしめた。


やわらかくて細い身体は腕に…胸によくなじみ、怖ず怖ずと背中に回ってきた手が嬉しくて、ついラスのうなじにキスをすると胸を押されて抗議された。


「ぎゅってするだけって言ったでしょっ」


「ごめん、チビが可愛かったからさ」


「もおっ。コーの馬鹿っ」


ままごとのような恋愛が心地いい。


コハクとラスの不安は少しずつ解消され、少しずつ距離を縮め合った。
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