魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
見学に訪れたというパーティーに興奮したラスはなんとか彼らに留まってもらおうとリロイの腕をくいくいと引っ張って視線を下げさせた。


「ねえリロイ、絶対ここに住んでもらおうよっ。どうしたらいいのかな…」


「流民は最優先に受け入れます。まだあちこち危ないので中は案内できませんが…」


「俺たちテントを持ってきたから大丈夫です。適当にこの辺に居ます」


「でも魔物が出たら大変だし…」


留まってもらいたいのだが、聖石や水晶のない場所には魔物が現れる可能性もあり、リロイが唸っていると、突然ラスが街の奥へ向かって走り出した。


「ラス!?」


「コーにお願いしてみるっ!」


何を、と言いかけてやめた。

ラスとコハクは…ゆっくり前進している。

互いを配慮し、深く愛し合いながらも、まだいつものような関係には戻っていない。


リロイはテントを張る彼らを手伝い、苦笑した。


――そしてラスは息を切らしながら城の螺旋階段を上って頂上に着くと、腰に手をあて、何故か上半身裸でいるコハクを見つけてやや顔を赤くした。


「こ、コー?どうして脱いでるの?」


「ん?あー、これは暑いから……ち、チビに見せようと思って脱いだんじゃねえから」


露出狂のようなヘンタイ発言をしてしまい、ここ1ヶ月もの間そういうことは封印していたコハクは復興を果たしつつある街を見下ろし、ラスはその隣に立った。


「ねえコー、お願いがあるの」


「どした?」


「街の外に人が来てるの。ここが見学できるようになるまでテントを張って待つって言ってるの。それで…あの…」


「あー、結界か?そうだなー…」


わざともったいぶり、顎に手を添えて考え込むふりをしてみると、案の定ラスが怖ず怖ずと手を握ってくると、自らコハクを誘ってみせた。



「キス…してもいいよ?だから…お願いしてもいい?」


「!そ、そっか?じゃあ…まあ…頑張ろっかな」



――瑞々しくやわらかなラスを抱っこし、むき出しの肩に手を置いたラスの顔が女の表情になり…


コハクはライトなキスではなく、舌を絡めた激しく深いキスをした。


ラスは…そのキスに、応えた。
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