魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ラスが手を伸ばし、その手を取った男はどう見ても悪人ヅラで、だが2人が並ぶとお似合いの美男美女で、流民たちは固唾を呑んで眩しい光景を見つめた。


「だーれが誰と結婚するだって?聞き捨てならねえな」


「言っておくが僕が言ったんじゃないからな。で、何をしに来た?」


渋い表情のリロイが腰に手をあてて問うと、コハクがラスの前で膝を折って屈むとラスが首に抱き着き、立ち上がりながら城の奥に広がる裏山を顎で指した。


「お散歩ー。さっきボインがお前を探してたぜ」


「コー、待って!あのね、これからこの人たちみたいにここに入れるようになるまでテントで寝泊まりするっていう人が多くなると思うの。ご飯とかたき火とかお手伝いしたいな」


「チビが手伝うのか?俺はまだ忙しくて手伝えねえけど…だいじょぶか?」


「うん、大丈夫。グラースやティアラたちにも手伝ってもらうから」


「炊き出しはグリーンリバーの連中にやらせるし防寒グッズも行き渡るように指示しとく。…うはっ」


…コハクが妙な声を上げたのは、ラスが感激のあまりにコハクの頬にキスをしまくったからだ。


今までがほとんどラスに触れなかった分コーフンが止めどない魔王は、流民たちを目が合うとにやりと笑い、足取りも軽くラスを抱っこして城の方へと歩いて行った。


「あの…ラス王女はその…あの男に騙されてるんじゃ…」


「ああ、ご覧の通り性格の悪そうな顔をしていますし実際悪いんですが、ラスを愛する気持ちには嘘偽りはありません。それよりあなたたちの衣食住はこちらでできる限りサポートしますのでご安心を」


――白騎士リロイと言えば、今ではすでに勇者として名高く、ドラゴンを駆って各国を飛び回る“ドラゴンテイマー”として広く知れ渡っている。

しかしその肝心のドラゴンはラスを抱っこしたコハクの後ろをどすどすと足音を立てて歩きながらついて行き、代わりにリロイの隣にはレッドストーン王国の後継ぎである王女が現れた。


ティアラは人々の前に現れることが少なく、姿を見た者は少ない。

流民たちは有名人のオンパレードに感激しながら手を取り合い、必ずこの新しい国に住んで貢献しようと固く誓い合った。
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