魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
それからのコハクは絶好調そのもので、てきぱきと魔物たちに指示を出し、クリスタルパレスの外にまで結界を張りめぐらし、ドラちゃんやサラマンダーを召喚し、その辺を歩かせた。
『何故また俺を呼び出す?もう氷は溶かしたはずだぞ』
「お前らは見世物だ。言っとくけど間違っても見学に来た奴らを食うんじゃねえぞ。チビが悲しむからな」
『ベイビィちゃんが悲しむようなことは俺はしない。で、ベイビィちゃんはどこだ?』
細い瞳孔をきょろきょろと動かしながらドラちゃんが問うと、コハクは腕を組んでふんぞり返りながら不気味な笑い声を漏らした。
「まだ寝てる。ふふふふ、チビは今夜俺の部屋に……おっとなんでもねえ。とにかく物を壊したり人を食ったりすんな。絶対だからな」
ラス以外の者には常に高圧的で屈服を要求するコハクの言葉には言霊が宿り、力の強い者には服従しなければいけない世界の住人のサラマンダーたちは渋々その要求を受け入れ、街の中央に降り立った。
「影、僕たちは外の流民たちに毛布や食料を届けに行って来る。ラスは?」
「まだ寝てるつってんだろが。昼から起きて来ると思うけど風邪気味だから無理させんなよ」
「わかった。…オーディンは?」
「どっか行っちまったぜ。戻ってこねえかもしんねえから戦力には数えるな。ほら、もう行け」
基本的に誰ともつるまない男なので、話が長くなりそうになるとめんどくさがる。
コハクの性格を知っているリロイはそれ以上何も言わず空中庭園から去り、入れ違いにローズマリーと会うと肩に手を置いて笑いかけた。
「何でも屋さんを見なかった?」
「どっか行った。次会うのは俺とチビの結婚式の時っつってたから半年後じゃねえかな」
――ローズマリーは振り返らず返したコハクの背中をじっと見つめた。
…この男はラスの視線には敏感だが、それ以外の視線には見向きもしない。
一緒に暮らしていた時は常に見られていたが…それはもう過去のこと。
「そうなのね、寂しくなるわ」
「本気なのか?なら追いかけて一緒に旅すればいい。引き留めねえし逆に応援するぜ」
笑いながら言ったコハクの細い背中に、触れた。
『何故また俺を呼び出す?もう氷は溶かしたはずだぞ』
「お前らは見世物だ。言っとくけど間違っても見学に来た奴らを食うんじゃねえぞ。チビが悲しむからな」
『ベイビィちゃんが悲しむようなことは俺はしない。で、ベイビィちゃんはどこだ?』
細い瞳孔をきょろきょろと動かしながらドラちゃんが問うと、コハクは腕を組んでふんぞり返りながら不気味な笑い声を漏らした。
「まだ寝てる。ふふふふ、チビは今夜俺の部屋に……おっとなんでもねえ。とにかく物を壊したり人を食ったりすんな。絶対だからな」
ラス以外の者には常に高圧的で屈服を要求するコハクの言葉には言霊が宿り、力の強い者には服従しなければいけない世界の住人のサラマンダーたちは渋々その要求を受け入れ、街の中央に降り立った。
「影、僕たちは外の流民たちに毛布や食料を届けに行って来る。ラスは?」
「まだ寝てるつってんだろが。昼から起きて来ると思うけど風邪気味だから無理させんなよ」
「わかった。…オーディンは?」
「どっか行っちまったぜ。戻ってこねえかもしんねえから戦力には数えるな。ほら、もう行け」
基本的に誰ともつるまない男なので、話が長くなりそうになるとめんどくさがる。
コハクの性格を知っているリロイはそれ以上何も言わず空中庭園から去り、入れ違いにローズマリーと会うと肩に手を置いて笑いかけた。
「何でも屋さんを見なかった?」
「どっか行った。次会うのは俺とチビの結婚式の時っつってたから半年後じゃねえかな」
――ローズマリーは振り返らず返したコハクの背中をじっと見つめた。
…この男はラスの視線には敏感だが、それ以外の視線には見向きもしない。
一緒に暮らしていた時は常に見られていたが…それはもう過去のこと。
「そうなのね、寂しくなるわ」
「本気なのか?なら追いかけて一緒に旅すればいい。引き留めねえし逆に応援するぜ」
笑いながら言ったコハクの細い背中に、触れた。