魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
コハクと共にドラちゃんに乗ってグリーンリバーに戻ってきたローズマリーは、一体オーディンが何をしようとしているのか全く分からず、今にも飛び出して行ってしまいそうなコハクを引き留めるのに苦心していた。


「コハク、落ち着いて。あなたの千里眼で…」


「千里眼でもわからねえ。精霊界に逃げ込まれたらなおさらアウトだ。あそこに長時間居ると…チビも妖精みたいな存在に成り果てちまう。そうなる前になんとかしないと…」


妖精の寿命は長いが、永遠ではない。

ましてや満足に触れ合うこともできず、徐々に記憶も薄れていき、本当の妖精のようになってしまうだろう。


そうなる前に、どうにかしないと。


「とにかく捜しに行く。後はグリーンリバーの連中に任せる。俺の代理は小僧だ。…任せたからな」


「…どうするの?どこへ行くつもり?」


「チビに危害を加えれば…殺す。右目も潰して…八つ裂きにして…ぶっ殺してやる…!」


「神殺しをすればあなたにどんな災いが降りかかるか…コハク、よく考えて行動を…」


「わかってる!だけど俺はチビが居ねえと……チビと必ず戻って来るから放っといてくれ」


唇を強く噛み締めたコハクは、真っ赤な瞳をぎらつかせ、窓辺に寄って口笛を吹くと、上空で旋回していたドラちゃんが下りてきて、その背に乗るとあっという間に小さな点になった。


ラスに固執するコハク――

ラスが傍に居ることで心の均衡を保っていられるコハク――

あの水晶の森の奥にある小さな家からコハクを追い出した後、悪事を働くコハクの悪報はあっという間に広がり、ローズマリーの耳に入った。


何かを求め、それが何かもわからずにやみくもに各地を転々とし、行き着いた場所が遥か北の針山の上に建てた城。


そして勇者と言われるようになったラスの父のカイに倒され、数年後…求めるものと出会ったコハク。


ラスを失えば、コハクは欠けた魂を持ったまま永遠にさ迷ってしまう――


そうさせないためにはどうすればいいのだろうか?


「…何でも屋さん…駄目よ。コハクとラス王女を引き離しては駄目。コハク…私も手伝うわ」


そしてローズマリーもこの後、姿を消した。
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