魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ローズマリーが“ラスがオーディンに攫われた”と言い残してどこかに消え、そして1日が経って心配と不安で眠れなかったリロイたちの元にコハクが帰ってきた。


「影!ラスは…!?」


「…捜す方法を見つけた。あいつは俺を試すためにチビを攫ったんだ。俺が暴れて…この世界を滅ぼすかどうかを見極めてる。思うようにさせてやるか」


戻って来るなり早足で地下に向かい、分厚い鋼鉄製の扉の前でようやくリロイと目を合わせた。


「しばらくここに籠もる。難しい魔法とか使うからここには近寄るんじゃねえ」


「…方法はよくわからないけど…ラスは危険な目には遭わないんだな?」


「そのはずだ。どの位かかるかわからねえ。…浮かれてチビから離れちまった。俺が悪い。…ごめん」


小さな声で謝ったコハクの肩に手を置いたリロイはコハクを責めず、頷いた。


「きっとお前にしかできないことだろうから、僕たちはクリスタルパレスの復興に努める。…頑張れよ」


「うっせ、言われなくても頑張るっつーの」


「食事だけは僕かティアラが届けに来る。クリスタルパレスのことは僕に任せてくれ」


――コハクはリロイの頭の上に手を置き、金の髪をくしゃくしゃにかき混ぜると肩を突いて扉から離れさせた。


「助かる。じゃあな」


重たい扉を閉め、ようやく落ち着く環境に着いたコハクは早速本棚から研究途中のファイルといくつかの分厚い書物を取り出し、眼鏡をかけてペンを手に取った。


魔法が使えた時代、賢者たちが書いた値段のつけられないようなレアな書物たちをテーブルいっぱいに広げ、ものすごいスピードでディスペルを会得するべくペンを動かした。


「チビ…待ってろよ。俺が迎えに行くまで大人しくしてるんだぞ」


――だがその願いも虚しく、ラスはとある場所で目覚め、真っ暗な部屋の中目を凝らし、動き回っていた。


「ここ…どこ…?頭痛い…」


薬の効果がまだ切れず、清潔なベッドに座って状況を整理していた時――



「お前は、何者だ…!?」


「え…、どこ…?あなたは誰?」



暗闇の中、2つの金色の瞳がぴかっと光った。

それは獰猛な…獣の瞳だった。
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