魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
コハクと離れているのは寂しい。

何故ここに連れ去られたのかもわからなければ、ビーストと名乗ったライオンも自分の存在に驚いていた。

何が何だか全くわからないまま、完全に人気の絶たれた薄暗く不気味な城内を動き回り、ビーストのものと思しき鋭い爪痕が残った絨毯を見つけ、しゃがんでそれを見つめた。


「コー…心配してるかな…。コーを知ってるかビーストさんに聴いてみよ」


大してビーストを怖がることもなく冒険気分で爪痕を追って3階へ行くと、少しだけ光の漏れている部屋を発見し、そっと近づいた。

ラスは僅かに開いたドアの隙間から中を覗き見し、ビーストが手鏡を見つめてため息をついている姿を見つけた。


「俺は…醜い…。あの時あの男を泊めていれば……、誰だ!!」


「きゃっ」


唸り声と共に勢いよくドアが開き、牙をむき出しにしたビーストが今にも襲い掛かってきそうになってさすがに1歩後ずさると、ビーストは緋色のマントで顔を隠しながら背中を向けた。


「見るな!俺を…見るな…!」


「あの…私…あの…どうしてここに居るかわからないの。ビーストさん…私を見て驚いたでしょ?私も驚いてるの。ここはどこで…あなたはライオンじゃないんでしょ?」


「…なに?」


「だから、ただのライオンじゃないんでしょ?人間なの?どうしたら元に戻れるの?」


――いきなり現れ、パニックになって泣き叫んでもおかしくない中、自分を全く怖がらず、しかも元に戻れる方法を考えてくれているラスにきょとんとなったビーストは、珍しいものを見るように金色の瞳を瞬かせた。


「俺が…怖くないのか?」


「怖くないよ、だってライオンじゃないもん。本当のライオンなら私、とっくにお腹の中でしょ?ねえ、そっちに行ってもいい?」


にこりと笑ったラスは本当に何も怖がっていないようで、逆にビーストの方がパニックに陥りながら怖ず怖ずと椅子を引き、ラスを招き入れた。


「俺は…呪われている。元に戻れる方法もわからない。使用人たちは皆、家具にされた。俺は独りだ。ずっとずっと、独りだ」


「私が居るからもう独りじゃないでしょ?あんまり長くここには居られないけど、一緒に元に戻れる方法を探そ」


さらに、きょとん。
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