魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
片づけをした後、あちこちの部屋を見て回り、埃がたっぷり積もった家具などを見て明日から掃除を始めようと決めたラスは、庭に出ると枯れた花壇を見て回り、小さな小屋を見つけて勝手に中に入って物色を始めた。


「あ、花の種だ…これ植えてもいいかな…いいよね」


自己解決してスコップを手にした時、遠くからいやな音がして空を見上げると…暗雲が立ち込めはじめ、慌てて小屋から出て城の中へと戻った。


「か、雷なのかな…やだな…コー…早く…」


…これでは頼りっぱなしだ。

コハクはそれを喜ぶだろうが、2年を経て少しは自立した自覚はあるのに、コハクが傍に居てくれるとやっぱり頼ってしまう。

ぱたぱたと階段を駆け上がって部屋に着くと、城内はひんやりとしているのに部屋は暖かく、それを誰がしてくれたか知ったラスはほんわかするとカーテンを引いて外が見えないようにすると椅子に座って指輪を見つめた。


「誰が私をここに連れて来たのかな。でも独りじゃなくってよかった。ビーストさんが居てくれなかったら泣いてたかも」


――コハクが綺麗にしてくれたガーネットの指輪を見つめていると、真っ赤な石がコハクの瞳の色に見えて、だんだん落ち着いてきた。

皆があの赤い瞳を“怖い”というが、そう感じたことは今まで1度もない。

小さな頃からいつもいつも、あの優しい赤い瞳で見守ってくれたのだから、コハクを悪く言う者には父親であれど猛抗議してきた。

そしてこれからも、ずっと。


「あ…こっちには来ないみたい…。よかった…」


そっとカーテンを開けると暗雲はなくなっていて、暖炉の前にあるソファに寝転び、揺れる炎を見つめた。


そうしているうちに眠たくなり、すうすうと寝入ってしまい、そんなラスに毛布をかけたのは…ビーストだった。


鋭い爪でラスを傷つけないように注意し、床に座るとラスの顔を覗き込んだ。

長い金の睫毛が美しく、かつての自分の姿を思い浮かべた。


「…俺を怖がらなかったり、かといって雷を怖がったり…変な女だ」


庭であたふたしていたラスを一部始終見ていたビーストは久々に小さく笑い、自身の笑顔に動揺しながら部屋を後にした。
< 283 / 728 >

この作品をシェア

pagetop