魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
そしてラスとビーストとの奇妙な暮らしがはじまった。
ビーストはほとんど顔を出しに来ることはなく、それでもラスは朝昼夜と食事を作り、用意を怠らなかった。
なかなか姿は現さなかったが…庭の花壇に種を撒いている時、隣りの棟の最上階からビーストが見下ろしてきていることに気付いていた。
そして部屋を留守にしている間に、代えの薪と部屋に備え付けのお風呂にお湯を張ってくれている。
とても親切にしてくれていて、お礼を言いたいのになかなか会いに来てくれず、ただ用意した食事はいつもきれいに平らげてくれていた。
毎日掃除をして、近くに居るのに会えなくて、独りぼっちじゃないのに独りになった気がして、左手薬指のガーネットの指輪を見つめて心を落ち着けると、めげずに頑張ろうと決めてはたきを手に部屋の掃除を再開しようとした時――
すぐ近くで轟音が響き、ラスは両手で耳を塞いでその場にしゃがみこんだ。
「か、か、かかか雷…っ」
この世で1番苦手な雷が庭に落ち、恐る恐る顔を上げてバルコニーから庭を見下ろすと、斜めになった門の近くには大きな穴が開き、もうもうと煙が上がっていた。
空には分厚くて真っ黒い雲が立ち込め、その奥には稲光が見えて、途端にラスは身体の震えが止まらなくなり、耳を押さえながら隣の棟に繋がっている渡り廊下を猛ダッシュした。
その間大粒の雨がラスを濡らし、ビーストの部屋の前まで着くとその場に座り込んでしまい、力なくドアを叩いた。
「びー、すと、さん…」
――弱々しくドアが叩かれた音にすぐ気付いたビーストは、散らかった部屋をラスに見られたくなかったのだが、少しだけドアを開けると目線にラスは居らず、足元まで目線を下げると、ずぶ濡れで身体をがたがた震わせているラスと目が合い、慌てて中へと招き入れた。
「ち、散らかっているが…」
「雷が怖いの…」
「なに?」
「雷が…っ、きゃあっ!」
またすぐ近くで雷が落ち、空気をびりびりと震わせた。
細い肩は冷え切っていて、マントを脱ぐと身体を包んでやり、すぐにバスタブに湯を張った。
「お願い、一緒に居て…っ」
「…ああ」
声を裏返らせ、どぎまぎと頷いた。
ビーストはほとんど顔を出しに来ることはなく、それでもラスは朝昼夜と食事を作り、用意を怠らなかった。
なかなか姿は現さなかったが…庭の花壇に種を撒いている時、隣りの棟の最上階からビーストが見下ろしてきていることに気付いていた。
そして部屋を留守にしている間に、代えの薪と部屋に備え付けのお風呂にお湯を張ってくれている。
とても親切にしてくれていて、お礼を言いたいのになかなか会いに来てくれず、ただ用意した食事はいつもきれいに平らげてくれていた。
毎日掃除をして、近くに居るのに会えなくて、独りぼっちじゃないのに独りになった気がして、左手薬指のガーネットの指輪を見つめて心を落ち着けると、めげずに頑張ろうと決めてはたきを手に部屋の掃除を再開しようとした時――
すぐ近くで轟音が響き、ラスは両手で耳を塞いでその場にしゃがみこんだ。
「か、か、かかか雷…っ」
この世で1番苦手な雷が庭に落ち、恐る恐る顔を上げてバルコニーから庭を見下ろすと、斜めになった門の近くには大きな穴が開き、もうもうと煙が上がっていた。
空には分厚くて真っ黒い雲が立ち込め、その奥には稲光が見えて、途端にラスは身体の震えが止まらなくなり、耳を押さえながら隣の棟に繋がっている渡り廊下を猛ダッシュした。
その間大粒の雨がラスを濡らし、ビーストの部屋の前まで着くとその場に座り込んでしまい、力なくドアを叩いた。
「びー、すと、さん…」
――弱々しくドアが叩かれた音にすぐ気付いたビーストは、散らかった部屋をラスに見られたくなかったのだが、少しだけドアを開けると目線にラスは居らず、足元まで目線を下げると、ずぶ濡れで身体をがたがた震わせているラスと目が合い、慌てて中へと招き入れた。
「ち、散らかっているが…」
「雷が怖いの…」
「なに?」
「雷が…っ、きゃあっ!」
またすぐ近くで雷が落ち、空気をびりびりと震わせた。
細い肩は冷え切っていて、マントを脱ぐと身体を包んでやり、すぐにバスタブに湯を張った。
「お願い、一緒に居て…っ」
「…ああ」
声を裏返らせ、どぎまぎと頷いた。