魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
この2週間、ほとんど顔を合わせることはなかったが…
ずぶ濡れのラスをさすがに無下にはできず、雷の音が鳴り響く度に身を竦めるので哀れになると暖炉の前に座らせてマントの上から身体を擦ってやった。
「湯が溜まったらすぐ風呂に入れ。俺は着替えを用意し、て…」
「やだっ、傍に居てっ!お願い、雷がこわ…きゃっ」
轟音が響き、涙で顔がぐちゃぐちゃのラスと目が合うと…ビーストはつい吹き出してしまった。
まるで状況を楽しんでいるようなビーストの胸をぽかぽかと叩き、ラスがまん丸になって手で耳を塞いでいると、ビーストは隣に座り、ラスの左手薬指に嵌まっている指輪をちらちらと盗み見た。
「…きっとコーという男が迎えに来てくれる。もうすぐだ、頑張れ」
「うん…、ビーストさんの呪いもきっと解いてくれるから…きゃっ!だから…だから…一緒に、頑張ろうねっ」
健気にも心配してくれるラスにじんときたビーストが頭をぽんぽんと撫でてやると、ふいにその毛むくじゃらの手をラスがぎゅっと握ってきた。
「な…っ」
「抱っこしてっ!」
急に胸に飛び込んできたラスに唖然呆然したビーストが金色の瞳を真ん丸にして驚いていると、ラスはふさふさの尻尾や腕に触り、背中に腕を回すと思いきり抱き着いた。
「本当は、こんなことするとコーがすっごく怒るんだけど、今はいいよねっ?だって雷が…雷が…」
「…きょ、今日だけだぞ」
あたたかな身体に触れていると少しずつ安心してきたのか涙が止まり、雷鳴が遠ざかって行くとその頃にはビーストの腕に抱かれながらうとうとし始めていた。
「魔法使いはコーしか居ないのに…ビーストさんに、呪いを、かけたのって…誰…」
そのまま寝入ってしまい、仕方なく唯一清潔にしているベッドにラスを寝かせると、少しずつ湧き上がってくる抱いてはならない想いに動揺し、そっと身体に毛布をかけてやった。
「…ここから早く追い出さなければ。…俺が本当の野獣になってしまう前に…」
花嫁になることが決まっている女と2人きり…
しっかりと指を握られてしまった手を振り払うことができず、ビーストはそうして朝までラスの寝顔を眺めて過ごした。
ずぶ濡れのラスをさすがに無下にはできず、雷の音が鳴り響く度に身を竦めるので哀れになると暖炉の前に座らせてマントの上から身体を擦ってやった。
「湯が溜まったらすぐ風呂に入れ。俺は着替えを用意し、て…」
「やだっ、傍に居てっ!お願い、雷がこわ…きゃっ」
轟音が響き、涙で顔がぐちゃぐちゃのラスと目が合うと…ビーストはつい吹き出してしまった。
まるで状況を楽しんでいるようなビーストの胸をぽかぽかと叩き、ラスがまん丸になって手で耳を塞いでいると、ビーストは隣に座り、ラスの左手薬指に嵌まっている指輪をちらちらと盗み見た。
「…きっとコーという男が迎えに来てくれる。もうすぐだ、頑張れ」
「うん…、ビーストさんの呪いもきっと解いてくれるから…きゃっ!だから…だから…一緒に、頑張ろうねっ」
健気にも心配してくれるラスにじんときたビーストが頭をぽんぽんと撫でてやると、ふいにその毛むくじゃらの手をラスがぎゅっと握ってきた。
「な…っ」
「抱っこしてっ!」
急に胸に飛び込んできたラスに唖然呆然したビーストが金色の瞳を真ん丸にして驚いていると、ラスはふさふさの尻尾や腕に触り、背中に腕を回すと思いきり抱き着いた。
「本当は、こんなことするとコーがすっごく怒るんだけど、今はいいよねっ?だって雷が…雷が…」
「…きょ、今日だけだぞ」
あたたかな身体に触れていると少しずつ安心してきたのか涙が止まり、雷鳴が遠ざかって行くとその頃にはビーストの腕に抱かれながらうとうとし始めていた。
「魔法使いはコーしか居ないのに…ビーストさんに、呪いを、かけたのって…誰…」
そのまま寝入ってしまい、仕方なく唯一清潔にしているベッドにラスを寝かせると、少しずつ湧き上がってくる抱いてはならない想いに動揺し、そっと身体に毛布をかけてやった。
「…ここから早く追い出さなければ。…俺が本当の野獣になってしまう前に…」
花嫁になることが決まっている女と2人きり…
しっかりと指を握られてしまった手を振り払うことができず、ビーストはそうして朝までラスの寝顔を眺めて過ごした。