魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
翌朝ラスが目覚めた時、傍にビーストの姿はなく、不安になって部屋を抜け出すとビーストが行きそうな場所をあちこち探して回った。
だがあまりにも広大な城のためにだんだん歩き疲れてふうふう息を吐いていると、少しだけ開いている扉を発見して外に出てみると…
空は昨晩とは打って変わって綺麗に澄み渡り、そしてラスがあちこちの花壇に植えた花の種を腰を屈めてみていたビーストに声をかけた。
「おはよ。昨日は…泣いちゃってごめんね?」
「…ちなみにちゃんと目隠しをして着替えさせた。俺が人間だった時の服だが我慢してくれ。部屋に母上のドレスがあるから着替えて来い」
――元々背の高い男だったらしく、白いシャツの丈はワンピースのように長く、襟元がレースになっていて、フリルの好きなラスは首を振って膝上まで見えている自身の脚を見下ろした。
「ううん、涼しいしこれでいいよ。…あっ、芽が出てるっ!すごいすごいっ」
王女として何不自由なく過ごしてきたラスにとっては、自身が植えた花の種から芽が出ている光景は感動の何物でもなく、今まで目にしてきたのは常に咲き誇った花の姿だったので、小さな緑の芽を見るとビーストの腕を取って振り回した。
「ね、もっと沢山植えよ!あの雷が落ちた穴も塞がなくちゃ。手伝うから一緒にやろ?」
「その前に腹ごしらえをしよう。…今日は俺が作る」
「ほんとっ?わあ、楽しみっ」
そしてビーストの腕にぶら下がりながらキッチンへ行き、自分よりも鮮やかな手つきで料理をするビーストを羨ましげにすぐ隣で見ていた。
「どうして王子様なのに料理が得意なの?」
「得意じゃない。10年間も独りで居れば自然に覚える」
「10年…」
10年も呪われていたのか。
その事実は一瞬ラスを悲しい表情にさせたが、オレンジを沢山切ると、切ったそばからつまみ食いしていき、ビーストがはにかんだ。
「俺の分が無くなりそうだ」
「だって美味しいんだもん。ここのオレンジってとっても美味しいよね」
皮ごと食べているラスに瞳を細め、急激に心が傾くのを止められないビーストは胸を押さえ、強く“人間に戻りたい”と願った。
だがあまりにも広大な城のためにだんだん歩き疲れてふうふう息を吐いていると、少しだけ開いている扉を発見して外に出てみると…
空は昨晩とは打って変わって綺麗に澄み渡り、そしてラスがあちこちの花壇に植えた花の種を腰を屈めてみていたビーストに声をかけた。
「おはよ。昨日は…泣いちゃってごめんね?」
「…ちなみにちゃんと目隠しをして着替えさせた。俺が人間だった時の服だが我慢してくれ。部屋に母上のドレスがあるから着替えて来い」
――元々背の高い男だったらしく、白いシャツの丈はワンピースのように長く、襟元がレースになっていて、フリルの好きなラスは首を振って膝上まで見えている自身の脚を見下ろした。
「ううん、涼しいしこれでいいよ。…あっ、芽が出てるっ!すごいすごいっ」
王女として何不自由なく過ごしてきたラスにとっては、自身が植えた花の種から芽が出ている光景は感動の何物でもなく、今まで目にしてきたのは常に咲き誇った花の姿だったので、小さな緑の芽を見るとビーストの腕を取って振り回した。
「ね、もっと沢山植えよ!あの雷が落ちた穴も塞がなくちゃ。手伝うから一緒にやろ?」
「その前に腹ごしらえをしよう。…今日は俺が作る」
「ほんとっ?わあ、楽しみっ」
そしてビーストの腕にぶら下がりながらキッチンへ行き、自分よりも鮮やかな手つきで料理をするビーストを羨ましげにすぐ隣で見ていた。
「どうして王子様なのに料理が得意なの?」
「得意じゃない。10年間も独りで居れば自然に覚える」
「10年…」
10年も呪われていたのか。
その事実は一瞬ラスを悲しい表情にさせたが、オレンジを沢山切ると、切ったそばからつまみ食いしていき、ビーストがはにかんだ。
「俺の分が無くなりそうだ」
「だって美味しいんだもん。ここのオレンジってとっても美味しいよね」
皮ごと食べているラスに瞳を細め、急激に心が傾くのを止められないビーストは胸を押さえ、強く“人間に戻りたい”と願った。