魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
コハクがディスペルを習得し、そしてラスが居るとされる島の特定も住んだと聴いたリロイたちが駆けつけ、ティアラはすでに泣き顔になっていた。


「ラス…無事かしら…」


「ふざけんな当たり前だろが。…チビに何かあったら俺は……なんでもねえ。行くぞ」


“死にたい”

そう言いかけてやめると、ぱちんと指を鳴らしていつもの馬車を呼び出し、自らはドラちゃんを召喚するとバルコニーから飛び乗った。


『見つかったのか』


「見つからなかったらお前を呼ばねえよ。御託はいいから行くぞ」


ラスが見つかったと聞いて俄然奮起したドラちゃんは真っ黒くて大きな翼を広げて一気に加速し、いち早く駆けつけるためにどんどんスピードを上げた。

世界の南西端…千里眼では海しか映らなかった場所だ。

だがその孤島に近付くにつれ、強大な魔法の力を感じた。

身体の底からびんびんと跳ね返ってくる魔力にぞくぞくし、島がなく海しか広がっていない場所でドラちゃんを空中停止させるとバランスをとって立ち上がり、口の中で何か呟くと、空中に1歩脚を踏み出した。


落下するかと思ったコハクはそのまま空を数歩行って立ち止まり、長い人差し指で眼下に広がる海を指した。


そして息を大きく吸い込んで深呼吸をすると、詠唱を開始した。


10分ほど続く長い詠唱は気力体力を大幅に削り、さらに集中力をも侵してゆく。

その間にも指は絶えず動き続け、真っ赤な瞳は瞬きを忘れたかのようにして光の線で描かれてゆく魔法陣を見つめていた。


そして遅れてやって来たリロイたちは馬車の中からその光景を見ていた。

風に髪をなぶられながら集中力を切らさないコハクは、やはり一流の魔法使いだ。


魔法陣を形成する光の線はみるみる形になり、見たこともない文字で綴られ、ローズマリーはその魔法陣を見て絶句していた。


「あんなに難しい魔法を…?それを…2週間で?すごいわ…本当にすごい…」


ラスのためなら、なんでもできる。

有言実行したコハクの細い背中を皆が見つめ、思いを託した。


――そして魔法陣が完成し、不敵な笑みを浮かべたコハクはひゅっと指を振った。


「ディスペル」


魔法陣から光の矢が飛び出した。
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