魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
コハクが剣を放り出した時が絶好のチャンスだったが…オーディンはコハクを殺したいわけではない。

ただ…気付いてほしかったのだ。

自分がコハクに望んでいることを――


「チビ!チビ!!お前…どうしたんだ!?吐きそうか?!ライオン野郎、中に案内しろ!」


「あ、ああ」


ビーストからラスを奪い、吐き気に耐えているラスを抱っこして城内へと駆けこむ後ろ姿を見送ったオーディンは、鎌を肩に担いで戦闘停止したデスに肩を竦めた。


「で?続けますか?」


「………あっちの方が面白そう」


一瞬にして鎌が消えるとゆったりとした足取りで城内へと向かい、オーディンは上空で待機している馬車を見上げて手を振った。

…色々怒られるのは覚悟の上のことだったが、ひとまず作戦としては成功だ。

思惑を綺麗に隠したオーディンは睨みつけて来るビーストと目が合うと、脚を止めた。


「俺の…俺の呪いを解いてくれ!」


「…方法はあるんですけどね。それも至極簡単なことですよ。今まで呪いが解けなかったということは、あなたに原因があるんでしょう」


「…なに!?」


ヒントを与えると城内へと消えて行き、ビーストも後を追いかけた。


――そしてコハクはラスを1階の部屋のバスルームに連れ込むと、ラスの背中を撫でながらずっと励ましていた。

ラスは吐き続け、心配で頭がおかしくなりそうなコハクは癒しの魔法を使ってみたが…吐き気は治まらない。


「チビ…大丈夫か?お前、なんで…」


「わかんな…、オレンジの、せい、かな…ごほっ」


確かにラスからはオレンジの良い香りがして、食べ過ぎのせいだったならそれはそれで安心だが…


「オレンジ好きだったか?食べてるとこあんま見たことねえけど…」


「ここの、とっても美味しいの。コーも食べてみ…ごほっ」


10分以上吐き続け、ようやく治まって来るとぐったりとしたラスを抱っこし、2週間の間ずっと泊まっていたという最上階の部屋へと行き、ラスをベッドに寝かせた。


「もし病気だったら大変だ。医者に診てもらおう。チビ、すぐ帰れそうか?」


「私が診ますよ」


いつの間にか部屋の片隅にオーディンが立っていた。
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