魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
魔界に戻ったデスは独り薄暗い家に戻ると1本のろうそくに炎を燈し、膝を抱えて椅子に座るとぼんやりしていた。
魔界は暗い。
だから出歩くのは好きだけれど、自分に声をかけて来る者は居ない。
あの好色な夢魔でさえも近寄ることを恐れ、おかげで今まで危ない目に遭ったことは全くない。
「………あの子…優しかった」
真っ黒でいて苦い飲み物を口にしてぼそりと呟くと、とても優しくしてくれたコハクの花嫁を想った。
最初から躊躇なく近付いてきたと思う。
鎌を見ても恐れることなく、逆にその鎌で何をするのかと聞いてきた女の子――
「…」
ふんわりしていると、この十数年…コハクがあの女の子の…ラスの影になった時から来訪者が途絶えていた家のドアをノックする者が現れた。
デスは骨だけの指をこきこきと動かすとフードを目深に被り直して立ち上がり、ドアにぴったり身体をくっつけると、来訪者に声をかけた。
「………誰…」
「神の使いで来た。お前に話があるそうだから俺たちについて来てくれ」
――やっぱり、やって来た。
神は全てを見ているのだ。
自分の意志で本来刈らねばならない命を救ったことを、咎めるのだろう。
…その覚悟はしていたのでゆっくりドアを開けると、金色の髪に碧い瞳をしたやわらかい微笑を浮かべている男と、朱い瞳に朱くて長い髪のむっつりとした表情を浮かべている女が立っていた。
これが初対面だったが、デスは彼らが何者であるのか知っていた。
「………神の鳥…」
「糾弾ではなく、ただ話がしたいそうだ。だから恐れず一緒に来てほしい」
「…………うん」
「申し訳ないが目隠しをさせてもらう。神の姿を見てはならない。いいか?」
「……うん」
一緒に外へ出ると放し飼いにしている真っ黒な愛馬が鼻を鳴らしながら近付いてきたので、鼻面を撫でてやった後すらりと飛び乗り、俯いたままのデスに金色の髪の男が含み笑いをしながら声をかけてきた。
「あの娘に関係しているようだな。実は俺たちもなんだ。1度きりの縁だと思っていたが…もうこれは偶然ではない。お前もあの娘の運命に巻き込まれたな」
「………楽しかったから…いい」
「そうか、俺たちも楽しかった。俺たちもかつて神の意志に従ってあの娘を救った。だから大丈夫だ」
デスはふわりと微笑んだ。
魔界は暗い。
だから出歩くのは好きだけれど、自分に声をかけて来る者は居ない。
あの好色な夢魔でさえも近寄ることを恐れ、おかげで今まで危ない目に遭ったことは全くない。
「………あの子…優しかった」
真っ黒でいて苦い飲み物を口にしてぼそりと呟くと、とても優しくしてくれたコハクの花嫁を想った。
最初から躊躇なく近付いてきたと思う。
鎌を見ても恐れることなく、逆にその鎌で何をするのかと聞いてきた女の子――
「…」
ふんわりしていると、この十数年…コハクがあの女の子の…ラスの影になった時から来訪者が途絶えていた家のドアをノックする者が現れた。
デスは骨だけの指をこきこきと動かすとフードを目深に被り直して立ち上がり、ドアにぴったり身体をくっつけると、来訪者に声をかけた。
「………誰…」
「神の使いで来た。お前に話があるそうだから俺たちについて来てくれ」
――やっぱり、やって来た。
神は全てを見ているのだ。
自分の意志で本来刈らねばならない命を救ったことを、咎めるのだろう。
…その覚悟はしていたのでゆっくりドアを開けると、金色の髪に碧い瞳をしたやわらかい微笑を浮かべている男と、朱い瞳に朱くて長い髪のむっつりとした表情を浮かべている女が立っていた。
これが初対面だったが、デスは彼らが何者であるのか知っていた。
「………神の鳥…」
「糾弾ではなく、ただ話がしたいそうだ。だから恐れず一緒に来てほしい」
「…………うん」
「申し訳ないが目隠しをさせてもらう。神の姿を見てはならない。いいか?」
「……うん」
一緒に外へ出ると放し飼いにしている真っ黒な愛馬が鼻を鳴らしながら近付いてきたので、鼻面を撫でてやった後すらりと飛び乗り、俯いたままのデスに金色の髪の男が含み笑いをしながら声をかけてきた。
「あの娘に関係しているようだな。実は俺たちもなんだ。1度きりの縁だと思っていたが…もうこれは偶然ではない。お前もあの娘の運命に巻き込まれたな」
「………楽しかったから…いい」
「そうか、俺たちも楽しかった。俺たちもかつて神の意志に従ってあの娘を救った。だから大丈夫だ」
デスはふわりと微笑んだ。