魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
自ら黒い布で目隠しをすると、愛馬は彼らの後を追って空を駆け、一旦どこかで立ち止まり、ドアのノブを回すような音がしたと思ったら一気に空気が清浄なものへと変わった場所へと出た。


…これから連れて行かれる場所は、神が…自分たちを造った創造神の居る所だ。

自分も神だが、所詮創造神に造られた小さき存在。

“話をしたい”と言われても一体どういうことなのかまるで想像できないデスは考えるのをやめて無心になると、だんだん花の香りが鼻につくようになり、その地へ着いたと思った。


「着いた。すまないがそのまま目隠しをしてもらう」


「………うん」


金色の髪の男に手を引かれて大人しくついて歩いていると、ついにその声はかかった。


「待っていたよ」


「…………俺を?」


身体にびんびんと伝わってくる異常なまでの神々しいオーラ。

自然と膝を折り、その場に正座したデスの肩の上に置かれた優しい手。

その手は次に目深に被っていたフードを背中側に払うと、顎に手をかけて上向かせられた。


「死を担う者が、死を迎える運命だった者を救った。理が崩れた。そうだね?」


「………はい。罰は…なんでも受け入れます。だから………」


低い声だがゆっくりと、そして優しく話してくれる神が笑った気配がして、じっとしていると、頬を撫でられて身体がぞくっと震えた。


「罰は無い。そもそも私があの娘が切に願っていた願いを叶えてやった。その時は…あの娘は死ぬ運命ではなかった。あの娘が身籠った時、私の可愛い黄色い鳥は碧い鳥の願いを叶えに会いに行った。次にあの娘をお前が救った。これは運命なのだよ」


「………死んでほしくなかった。……俺の…たった1人の友達の…大切な人なんです」


「お前に優しくしてくれたんだね。ここへ呼んだのは、私からお前に感謝をしたかったから呼んだんだよ」


「………感謝…?」


――その時、デスの背中や肩、膝に次々と触れる大きな手と、小さな手を感じた。

それは複数で、こうして誰かに触られる経験をほとんど持ったことのないデスが動揺していると、一際優しい手が頭を撫でてくれた。


「いつか必ず白き者になれる。お前の判断は間違っていなかった。ありがとう、感謝しているよ」


いつかは白き者に。

望む姿に――
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