魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「え…?赤ちゃんが…!?」
ラスの母…ソフィーは両手で口を塞いで悲鳴を呑み込んだ。
あの赤目の魔王の子供を、愛娘が妊娠した――
気性の優しいソフィーは全開の笑顔で腹を撫でているラスを前にして卒倒しそうになっていた。
「そうなの。結婚より先に赤ちゃんができちゃったけど…すっごく嬉しいの。男の子ならコーに似るといいな、絶対かっこいいと思うから」
「……ラス…」
震える声でへなへなと腰が抜けたかのように椅子に座ったソフィーの心情…ラスは知っている。
母は、コハクが大嫌いなのだ。
小さな頃からコハクが話したり姿を現わしたりすると、一切見ずに…一切口を聴かずに、その母の態度が…実は大嫌いだった。
王妃としての執務にかまけて、ほとんど遊んでもらった記憶はない。
いつかその役目が自分に回ってくるのだと思うと鳥肌が立って、いっそのこと逃げ出してしまいたいとさえ密かに思い詰めたこともあった位だ。
「そんな声出さないで。お母様は私に赤ちゃんができたのが嫌?パパがコーだから嫌なんでしょ?でもお母様がどんなに反対したって私はコーと結婚するんだから!」
興奮して頬を紅潮させるラスが怒りに満ちた表情になり、こういう表情になるのはコハクを非難した時だけだと知っているソフィーはハンカチで目じりを拭いながら何度も首を振った。
「ラス…だってあの男は魔王なのよ!?人々を苦しめて、お父様も大きな怪我をしたわ!まさか本当にあなたが魔王の花嫁になるなんて…私…っ」
「もういい!赤ちゃんが生まれてもお母様には抱っこさせてあげないんだから!結婚式にも……もういい!」
「ラス!」
――泣きながら廊下を走った。
途中すれ違う白騎士や近衛兵たちが心配そうにして後をついて来たがお構いなしに走り続け、最上階の自室に着くと音を立ててドアを開けた。
「チビ?……どした?!顔真っ赤だぞ?誰かに泣かされたのか!?俺がとっちめて…」
「コー、違うの…。いいの…。もういいの…。コー…抱っこして」
ベッドに寝そべってマタニティ本を熟読していたコハクは、起き上がると意気消沈して唇を噛み締めているラスを抱き寄せると膝に乗せて頬をくすぐった。
「…ソフィーか」
「…うん。でもいいの。みんなに祝福されたかったけど…いいの」
反対されるのは想像していたから。
ラスの母…ソフィーは両手で口を塞いで悲鳴を呑み込んだ。
あの赤目の魔王の子供を、愛娘が妊娠した――
気性の優しいソフィーは全開の笑顔で腹を撫でているラスを前にして卒倒しそうになっていた。
「そうなの。結婚より先に赤ちゃんができちゃったけど…すっごく嬉しいの。男の子ならコーに似るといいな、絶対かっこいいと思うから」
「……ラス…」
震える声でへなへなと腰が抜けたかのように椅子に座ったソフィーの心情…ラスは知っている。
母は、コハクが大嫌いなのだ。
小さな頃からコハクが話したり姿を現わしたりすると、一切見ずに…一切口を聴かずに、その母の態度が…実は大嫌いだった。
王妃としての執務にかまけて、ほとんど遊んでもらった記憶はない。
いつかその役目が自分に回ってくるのだと思うと鳥肌が立って、いっそのこと逃げ出してしまいたいとさえ密かに思い詰めたこともあった位だ。
「そんな声出さないで。お母様は私に赤ちゃんができたのが嫌?パパがコーだから嫌なんでしょ?でもお母様がどんなに反対したって私はコーと結婚するんだから!」
興奮して頬を紅潮させるラスが怒りに満ちた表情になり、こういう表情になるのはコハクを非難した時だけだと知っているソフィーはハンカチで目じりを拭いながら何度も首を振った。
「ラス…だってあの男は魔王なのよ!?人々を苦しめて、お父様も大きな怪我をしたわ!まさか本当にあなたが魔王の花嫁になるなんて…私…っ」
「もういい!赤ちゃんが生まれてもお母様には抱っこさせてあげないんだから!結婚式にも……もういい!」
「ラス!」
――泣きながら廊下を走った。
途中すれ違う白騎士や近衛兵たちが心配そうにして後をついて来たがお構いなしに走り続け、最上階の自室に着くと音を立ててドアを開けた。
「チビ?……どした?!顔真っ赤だぞ?誰かに泣かされたのか!?俺がとっちめて…」
「コー、違うの…。いいの…。もういいの…。コー…抱っこして」
ベッドに寝そべってマタニティ本を熟読していたコハクは、起き上がると意気消沈して唇を噛み締めているラスを抱き寄せると膝に乗せて頬をくすぐった。
「…ソフィーか」
「…うん。でもいいの。みんなに祝福されたかったけど…いいの」
反対されるのは想像していたから。