魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
頑なにソフィーを否定するラスを魔法で眠らせてグリーンリバーに着くと、城の前の庭でドラちゃんがうろついているのを確認してリロイの部屋を訪ねた。


「おい小僧、頼みがある」


「影…お前どこに行ってたんだ?お前が居ないと…」


「俺が居なくてももう大丈夫だろ。それよかチビを頼む。目を離さないでいてほしいんだ」


髪を結び、黒のシャツとパンツ、白のネクタイという見慣れない格好をしているコハクと、コハクの腕に抱かれて頬に涙の痕が残って眠っているラスを見たリロイは書きかけの紙から目を上げて2人をじっと見つめた。


「また何かあったのか?」


「ゴールドストーン王国に戻ったらチビがソフィーに泣かされた。ちょっと俺は出かけてくるから、チビが起きたら“地下に籠もってる”って言ってくれ」


一緒に部屋を出て肩を並べて歩いているうちに、超がつく魔王嫌いのソフィーに何を言われたのか察したリロイは無口なコハクの横顔を見て、コハクもまた憤っているのを感じた。


「…どこに行くんだ?」


「俺も一旦落ち着かねえとお前やオーディンにあたっちまう。少し静かなところに行って来る」


「わかった。ラスは僕に任せて行ってくれ。ラスの話を聴いて、元気を出してもらえるように努力する」


「ああ、すまねえな」


――部屋に着くと不本意ではあったがラスをリロイに抱っこさせ、真っ黒なベッドの前に立ったコハクが指をぱちんと鳴らすと、ベッドがぱっと消えた。

リロイが目を丸くしていると、コハクがシャツの胸ポケットから何か小さなものを取り出したので目を凝らして見たら、それはピンク色の天蓋付のベッド…それも見たことのあるようなベッドで首を傾げた。


「それは…模型か?」


「ちげーよ。これはさあ」


ベッドがあった位置の中心の床に置いてまた指を鳴らすと模型が大きくなり、そのベッドがどこにあったものかわかったリロイは懐かしさに瞳を細めた。


「チビがこのベッドのがいいっつうからさ。…もう抱っこいいだろ、返してもらうからな」


相変わらず心の狭いコハクはラスを奪い返すと起こさないようにゆっくりと寝かしつけて額にキスをして笑いかけた。


「ちゃんと寝てろよ。出歩くとマジ許さねえからな」


そして、“静かなところ”へと向かった。
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