魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
コハクがソファに座り、デスが壁に取り掛かりながらベッドに座ると膝を抱えてじっとコハクを見つめた。


…何故かコハクは自分を構ってしょっちゅう遊びに来る。

共通点などどこにもないが、デスはコハクとの共通点を捜してじっと見つめ続けた。


「うまっ!ほら、お前も飲めって」


「………寝るとこ…」


「これ飲んだらぐっすり眠れるって。お前のせいでチビが“デスさんはどこ?いつ会えるの?”って質問攻めなんだからな。ったく…」


「………元気?」


問うと、コハクの口がぴたっと閉まった。

一瞬真剣な表情にもなったので、ここに来たのには何か理由があるのだと思ったデスはコハクの隣に移動するとぴったりくっついてうざがられた。


「…なんで隣に座るんだよ。鬱陶しいっつーの」


「…………元気?」


「元気っつーか…元気はねえな。親と喧嘩しちまって沈んでる。慰めてやりてえけど…今はそっとしておいてやりたいんだ。俺もキレそうになったし、俺も独りの時間が必要だったからな」


「………飲む」


「ああ、飲め飲め」


…とはいってもグラスに移すわけではなく、ラッパ飲みしていたボトルを手渡されると、デスは意外にも豪快に呷り、よく出た喉仏が何度も大きく動いた。


半分位まで飲んでからコハクに返したが、コハクはボトルを受け取らずにデスの肩を抱くとぼんやりとしていて、デスも何も言わずにぼんやりした。


独りになりたくてここへ来たのは正解だ。

ここには来客もないし、口数の少ない自分しか居ない。

頼って来てくれたわけではないだろうが、久々に召喚され、優しい女の子と出会い、少しだけ自分が変わった気がする。


「…………行ってもいい?」


「へ?ああ…うちにか?まあ…チビも喜ぶと思うけど…仕事はどうする?」


「……今はそっちのが大事」


「んー…、わかった。でももうちょっとだけ2人で居ようぜ。お前は命の恩人だし、ある程度は願いを叶えてやるぜ。あ、チビ関係は駄目だけどな」


にかっと笑ったコハクに微笑み返すと、デスは先ほどの出来事を少しだけコハクに語った。


「…………神様に会った」


「へえ…怒られたか?」


「……ううん。嬉しいこと…言われた」


コハクはまた笑って、デスの髪をくしゃりとかき混ぜた。
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