魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
両親に…特に母親にあんなにも頑なにコハクを拒絶されるなんて――

想像してはいたが予想以上の反応を見せたソフィーの態度を見てからずっと具合の悪かったラスは、かたんと何かの音がしたのでむくりと起き上がった。


「コー…?」


「………」


さっきまでリロイが居たはずなのだが…母国で両親に心を傷つけられたのをリロイに話せずにいたラスは、膝を抱えてソファーに座っている真っ黒な男を見つけると跳ね起きた。


「デスさんっ!」


「………眠れた?」


「うんっ。どうしたの?お家に帰ったんじゃなかったの?あれ?コーは?」


「…………地下」


片言ではあるが、すでにデスの性格を熟知したラスはデスの隣に座り、頭を撫でた。


「また会いに来てくれて嬉しい。ちょっと悲しいことがあったから…」


「………」


フードを目深に被っているので鼻から下しか見えないが、ラスは一向に気にせずにテーブルに置いたランプの灯りを見つめた。


「赤ちゃん…助けてくれたんでしょ?」


「……………そういうの、話せない」


「あ、そっかごめんね。なんか元気出て来ちゃった。コーにも悲しい想いさせちゃったかな…」


デスの頭を撫で続けていると、デスも手を伸ばしてラスの頭をよしよしと撫でた。

ただ骨だけの手なのでやわらかくなくて固い感触がしたが…デスがスキンシップを取ってくれたので嬉しくなって腕に抱き着くと、少しだけ口元が緩んだのが見えた。


「…………触っていい?」


「え、お腹を?うんいいよ。沢山触って。コーには内緒だよ、すっごく怒るから」


デスは手を伸ばして突き出したラスの腹に触れた。

あの時感じた不吉なイメージは払しょくされていて、触れた骨だけの手にとすんと胎動が響いた。


「あれ?今…動いた?」


「………うん、元気」


さらに嬉しくなったラスがデスの手を掴んで引き寄せて撫でさせていると…


「あぁーーーー!?何やってんだデス!チビ!離れろ!何さしてんだよ!」


「………」


「あ、コーだ。地下に行ってたんじゃないの?あのね、デスさんが遊びに来てくれたよっ」


「………デス、でいい」


「うん、じゃあそう呼ぶね。コー?ほっぺが膨れてるよ?」


ラスに元気が戻ったのはいいが…


魔王、お冠。
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