魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ちょっと目を離した隙にいい雰囲気になってしまった2人にきりきりしていると、ラスがベッドに座って腹を指した。


「コー、さっき動いたの。触ってみる?」


「マジでか!触る!っていうか聞く!」


先程の怒りが吹き飛んだのか、ラスに駆け寄ると膝をついて耳を腹に押し当てて瞳を閉じた。

…だが期待していた反応はなく、しょげながら身を起こすとラスが頭に手を回してまた腹に押し付けた。


「もうちょっと聞いてて。絶対動いたんだから」


「じゃあ動くまでこうしてる。ベビー、パパですよー」


「………」


親馬鹿炸裂のコハクの隣にいつの間にか移動していたデスはお尻を地面につけずに膝を抱えて傍らに座ると、コハクの腰をつんつんと突いた。


「なんだようるせえな、気が散るだろが」


「………俺に反応した」


「はあ!?俺がパパなのになんでお前に反応すんだよ!嘘つくな!」


「………ほんと」


「じゃあやってみろよ!嘘ついたら針千本飲ますからな!」


コハクがラスの腹に耳をあてている状態でデスが手を伸ばしてローブから骨だけの手を出し、腹に触れた途端――


とんとん


押し返すような胎動がコハクの耳に伝わり、大感激したコハクはデスの手を握ってあて続けた。


「すげえ!今絶対動いた!…つかなんで俺じゃ駄目なんだよ…マジいらっとした!」


目深に被ったフードを払いのけて素顔が現れたデスはどこかしたり顔をしていて、ラスはまたデスの頭を撫でると次いでコハクの頭も撫でた。


「デスは教えてくれないけど、助けてくれたデスにベビーがお礼してるんだよきっと。ね、コーもそう思うでしょ?」


「…ん、そうだな。…おいもう離れろよ。…なんだよ物欲しそうな目して。まさかお前も耳あててみたいのか?」


「…………うん」


「駄目!絶対駄目!断固反対!駄目ったら駄目!」


駄々をこねて嫌がるコハクに笑い声を上げたラスは、改めてデスが助けてくれた命を大切にしようと思った。


…両親に疎まれたっていい。

この子をコハクと一緒に心から愛してあげて、笑いの絶えない家族にしよう。


「なんか元気出てきちゃった。ねえ一緒にオレンジ食べる?一緒に食べよ」


「………うん」


ラスもまたデスを弟のように感じていた。
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