魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ベルルのサプライズやデスの来訪もあってか、ラスの体調が格段に良くなると、コハクはドアの外で待機していたリロイに声をかけた。


「すまなかったな。チビの体調はだいぶ良くなったけど今夜は部屋で食事をするからお前たちは下で食ってていいぞ」


「ラスは…大丈夫なのか?死神が何度も来るなんて僕にしてみたら不吉だ」


「あいつは今立場を捨ててここに来てる。何もあいつの意志ひとつで誰かが死ぬわけじゃねえ。あいつの立場も理解してやってくれ」


「…僕の立場は未だ白騎士のままだ。ラスに何かあると陛下と王妃に申し訳が立たない。…頼んだからな」


リロイは一瞬だけ部屋の中を覗き込み、膝を抱えてソファに座っているデスと、手を繋ぎ合ってきゃっきゃっしているベルルとラスを見ると少しだけ笑みを浮かべて立ち去った。

そしてコハクは通りがかったエプロン姿の魔物を捕まえて人数分のディナーを注文して中へ戻ると、そこでラスがはじめてベッドが変わっていることに気付いた。


「このベッド…どうしたの?私がずっと使ってたベッドでしょ?」


「チビがこっちのがいいっつったから持って来たんだ。それよかここで食うんだからちょっとセッティングするからなー」


人数分の椅子と全員で囲めるテーブルを用意して部屋の中央に置き、テーブルクロスや燭台などをてきぱきとコハクが並べている間、ラスはベルルが贈ってくれた虹色の腹帯を嬉しそうにずっと見つめていた。


「ベビーはみんなにお祝いしてもらって幸せだね。ねえデス、ベビーが生まれたら真っ先に抱っこしに来てね?約束してくれる?」


「………わかった」


「ほんと?それにワンちゃんやクロちゃんたちがベビーの遊び相手になってくれると嬉しいな」


「魔王様、ディナーの用意ができましたのでお持ちしました」


「ん、運べ運べ」


ラスのメニューだけは栄養の偏りがなくかつ好物を盛り込んだ特別なものを用意し、いち早くラスの隣をゲットしたコハクだったが、その逆隣に自然とデスが座ってしまい、唇を尖らせた。


「デス、その姿勢やめろよ。食う時位ちゃんと座りなさい!」


「…………わかった」


注意されてちゃんと脚を伸ばすと、ラスが両手でパンを持って美味しそうにもぐもぐと食べ始め、デスも見よう見まねで両手でパンを持ってまるでリスのように食べ始めた。
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