魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
デスの手に熱が伝わることはない。

手以外であればあたたかさを感じることはできるが…気安く自分に触れてくるのは、コハクとラスだけだ。


「ねえデス、早く隣に来て」


「その台詞!俺に言ってほしかった!」


「コーはもう隣に居るでしょ。デスってすごく細いよね。本当にご飯食べなくても大丈夫なの?沢山食べたらちょっとは太れるの?」


「………多分」


「ねえコー、しばらくデスとここで一緒に暮らせないかな?お仕事の時は仕方ないけど…コーだってベビーが動いてるの触りたいでしょ?」


…一緒に暮らす?


――またぴんと来ないことをラスに言われて、突っ立ったまま脚の指をわきわきさせていたデスはそわそわと手の指も動かしながらじっとコハクを見つめた。

コハクとはもうかなり付き合いが長く、目が合うとそれだけで理解してくれたコハクは盛大すぎるため息をついた。


「お前今まで自分の意志あんまなかったけど最近言うようになったのな」


「え?コー…デスは何も言ってないでしょ?どうしてわかるの?」


「付き合い長いからわかるって。ここに居たいか?居るなら居るでただ飯食わせねえぞ。働いてもらうけどそれでもいいか?太陽の下にだって行かなきゃなんねえぞ」


太陽の光…

光にあたるとまるで火傷したかのように肌がひりひりするのが嫌で、だから自然と暗いところに居るようになったが…


コハクとラスと一緒に居ると、コハクの言うように何ひとつ意志がなく日々を送ってきた自分が変われるような気がして、デスはこっくりと頷いた。


「…………日傘があれば…大丈夫…」


「フリルが沢山ついててすっごく可愛いのがあるから、じゃあそれ貸してあげるね。早く隣においで、眠たくなってきちゃった」


ベッドに横になると最速で眠たくなるラスが目を擦ると、デスがラスの隣に入って来て首までしっかり掛け布団を被った。

ラスは胸のあたりをぽんぽんと叩いてやり、穏やかに下がった目元を見てなんだか癒されて、瞼にちゅっとキスをして…魔王に怒られた。


「チビ…それする相手間違ってるぜ。俺だろ?俺にだろ?俺にだけだろ?」


「コーにもちゃんとしてあげるよ。ね、明日から隣の部屋を使ってね。束縛したりしないから、気が向いたら手伝ってほしいな」


「……うん」


返事をしつつ、嬉しくて眠れそうになかった。
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