魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「はいこれ」


春風が心地よかったので1階の中庭に裸足で降りたラスは、デスに1本の日傘を手渡した。

フードをしっかり目深に被ったデスはそれを受け取ると日傘を開いたが…


「ぶふっ!似合わねえな」


「そんなことないよ、とっても可愛い。お気に入りの傘だけどデスにあげるね」


ラスが手渡した日傘は縁に白のフリルが沢山ついた白い日傘で、真っ黒なデスとは全く対称的なものだったのだが、デスは日傘をくるくると回して喜んでいた。


「…………ありがとう」


「太陽の光にあたるとデスが焦げちゃうから絶対差しててね。ね、ご飯食べよ」


リロイたちがぞろぞろと集まって来たいたので食卓の間へ上がろうとすると、デスが日傘を差したまま中へ入ろうとしたのでコハクから叱られた。


「それは外に出る時だけだぞー。お前には今日は力仕事やってもらうからな」


「…………うん」


「コー、そんなのさせたらデスの手の指折れちゃうよ」


「………大丈夫」


――リロイたちとデスの目が合うと、デスはラスの小さな背中に隠れるような仕草を見せて席についた。


…死神と仲良くなるというのはやはり不吉で、リロイたちにとって歓迎できることではなかったが…ラスがものすごく懐いていたので、それは糾弾しないでおこうと話し合っていた。


「ラス、今日はクリスタルパレスに住みたい人たちのリストを作るんだけど、受付嬢になってもらえるかな?きっとみんな喜ぶよ。座ってるだけでいいから」


「座ってるだけでいいの?グラースは?ティアラは?ベルルは?コーは?ローズマリーは?オーディンさんは?」


「私とローズマリーは元々あった荒れ果てた開墾地の調査です。彼らを養えるだけの野菜や家畜を育てる場所が必要ですから」


「調査が終わったらノームたちを貸してやる。チビとボインは小僧に任せた。グラースとベルルは見回り。俺とデスは力仕事やるかー」


固いパンをちぎってデスに手渡してやっていたラスはぱっと顔を上げて前に座っていたコハクに身を乗り出した。


「じゃあランチ作ってあげるねっ。サンドウィッチとかスープとかデザートとか。食べたい?」


「食いたい!」


「コー、デス、時々見に行くからね」


「………うん」


歯車が、重なり合う。
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