魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
様々な職業の者が居た。

獣医、医者、建築士、デザイナー、占い師、画家、学者、シェフ、農業専門家…

それぞれが新天地を求め、氷に閉ざされたはずのイエローストーン王国が見事に復興を果たした様に驚き、面白半分でやって来た者たちもいつしか本気でこの街に住みたい、と思い始めていた。


何よりも各強国の王女や騎士、そして見識のある者たちも居るのだから、この国は良くなるだろう。

特になかなか姿を現わさなかったラスの人気たるや凄まじいものがあり、いつまで経っても人垣は割れることがなかった。


「そろそろお昼だよね?リロイたちはどうするの?私はね、お弁当作ってきたの」


「ティアラが作ってくれたから僕たちはそれを食べるよ。じゃあ一旦休憩しようか」


「うんっ。じゃあ行ってこよっかな」


ランチの入ったバスケットを持って立ち上がろうとした時――ざわざわと騒ぐ声が聴こえてたと思ったら、人垣が割れた。


リロイとグラースが自然とラスを守るようにして前に立ち塞がったが彼らもすぐ脇に退き、ラスの背中をぽんと押した。


「あ、コーとデスだ」


片やデスは日傘を差したままで、片やコハクはそんなデスの背中を足で蹴り、いじけたデスがその場に座り込みをしてしまっていらいらしながら腕組みをしていた。


「もうっ、コー!デスをいじめちゃ駄目っ」


「えー!?なんで俺が怒られるんだよ!のろのろ歩いてるこいつが悪いんだし!」


「…………痛かった」


「痛かったの?擦ってあげる。みんな見てるからほら立って。手引っ張ってあげるから」


「……うん」


ラスの手を握って立ち上がったデスはラスの後ろをちょこちょこ歩いて受付所となっているテントの中へ入ると、衆目の的になっていたコハクはそれを全く気にもせず叫んだ。


「俺の天使ちゃんに触んな!お前マジぶっ飛ばすぞ!」


一体どんな関係なのか全く想像できない人々は幌が下ろされて中が見えなくなったテントの回りから離れず、テントの中に入ったラスはいらいらしっぱなしのコハクに正面から抱き着くと両頬を手で挟んで顔を引き寄せてキスをした。


「お疲れ様。怪我しなかった?」


「しなかった!てか今のキスも1回!俺すっげえ頑張ったんだぜ。そこの骨野郎よりもすっごく!」


「………俺も…頑張った…」


火花がばちばち。
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