魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ラスたちがテントから出ると、ストーカーのように上空からテントを監視していたドラちゃんが大きく吠えた。


あまりの恐ろしさに身の毛がよだつ者が多い中、ラスはコハクに抱っこされながらドラちゃんに向かって大きく手を振ると呼びかけた。


「ドラちゃーん、乗ってもいい?」


『乗ってくれ。早く。今すぐ』


「あんのヘンタイドラゴンが」


真性のヘンタイにヘンタイ呼ばわりされるのは屈辱だったろうが、それよりもラスに呼ばれてラスにお願いされて、ラスに背中に乗ってもらえることで大コーフンのドラちゃんはラスが吹き飛ばされないように少し離れた平地に舞い降りると、地響きを立ててにじり寄ってきた。


「グリーンリバーに運んでもらえる?」


『…後ろの黒い2人組は俺に乗るな』


「蜥蜴のお化けのくせして口答えするんじゃねえぞこら。強制的に従わせてやろうか?ああん?」


腰に手をあててドラちゃんの前に立ったコハクが真っ向から睨みつけると、威嚇してとげとげが沢山ついた尻尾をびたびた地面に叩き付けていたドラちゃんは…抵抗をやめた。


「もうっ、コーったら。ごめんねドラちゃん。…きゃっ?」


コハクよりも先にデスがラスを抱っこするとドラちゃんの背中側から尻尾を伝って背中に上がり、バランスの悪い背中の上で正座をした。


「ありがと。でも私に触るとコーが怒るよ?」


「………別にいい。魔王…怒りんぼ」


「ふふふ、だよねー。コーは怒りんぼ」


「おいこらそこ!いい雰囲気醸し出してんじゃねえぞ!デスそこのけ!チビを抱っこすんのは俺なの!」


デスはすんなり場所を譲るとラスの腰を後ろからしっかり抱いたコハクを横目で見ながら急速に小さくなってゆくコロニーを見下ろした。


「コーは地下で探し物するんでしょ?私お昼寝してていい?」


「んー、ゆっくり寝ろよ。デスはチビが出歩かねえようにしっかり見張りしとけよ」


「…………わかった」


グリーンリバーとクリスタルパレスの距離はドラゴンの翼で飛べば数分の距離なので、すぐに上空に着くと金色の花が咲き乱れる城の屋上に下ろしてもらった。


眠たくなるのはベビーが成長している証。

ラスは愛しげに腹を撫でてコハクに笑いかけた。
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