魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
デスが隣室で言われた通り両手で耳を塞いで1時間ほど縮こまっていると、廊下に人の気配を感じてドアを開けた瞬間また手で耳を塞いだ。


「きゃっ?あ……死神…」


「…………誰」


廊下に居たのはラスたちのいる部屋をノックしようとしていたティアラで、白いローブ姿でどこかへ出かける風情だったが、人見知りをするデスはティアラの顔をまともに見ずに俯いた。


「私…ティアラと言います。あの…よろしく…」


「…………よろ…しく…」


ティアラもデスも人見知りなので挨拶を交わすだけでいっぱいいっぱいになり、ティアラが再びノックしようとすると、それをデスが引き留めた。


「……今…多分…駄目…」


「え…、どうして?でも私ラスに用事が…」


こそこそ会話を交わしていると、件の部屋のドアが勝手に開いて文字通りティアラが飛び上がって驚き、出て来たコハクは上半身裸でがりがりと黒髪をかき上げた。

それでコハクとラスが何をしていたかということにさすがに気付いたティアラは真っ赤になって頭を下げた。


「ご、ごめんなさい、邪魔するつもりじゃ…」


「チビに用か?今寝てるし後で…っておい、勝手に中に入んなって」


コハクの脇の下をするり擦り抜けたデスは相変わらず両耳を手で塞いだままだったが、ベッドに横向きに眠っているラスを見てまた首を傾けた。


「………どうして裸…」


「チェリーにゃわかんねえだろな。って何の用だよ」


怖ず怖ずと中へ入ったティアラはなるべくラスを見ないように努めると、どさっとソファに座ったコハクの正面に腰を下ろした。


「リロイが最近ずっと朝まで帰って来ないの。コロニーに行ってるみたいだけど…多分最近ほとんど寝てないはず。心配だから相談しに来たんだけれど…」


「あー…チビがオーディンに攫われてからこっちずっと任せっきりだったからな。あいつ無駄に責任感強ぇからな…俺が見に行ってやるよ」


「本当に!?ありがとう、助かるわ」


「じゃあお礼にキスしろよ」


「え!?いやよ!やめてこっちに来ないで!」


ティアラをからかって満足したコハクは黒いシャツを頭から被るとバルコニーに出て顎でデスを呼んだ。


「お前ついて来い。あ、その日傘は置いて行けよ」


そして召喚したケルベロスに乗るとクリスタルパレスに向かった。
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