魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
羽音
コハクの言う通り、ラスの体調は少しずつ崩れていった。
1日に数回は寝込むことがあり、吐き気も酷く真っ青な顔をしている。
コハクたちはラスのことが気がかりで仕方がなかったが、こればかりはどうしようもなく、魔法で眠らせてやること位しか改善策はなかった。
「なあ…つわりって…こんなに酷いものなのか?チビがこんなにつらそうなのに何もできねえなんて…」
魔法で眠っているラスの回りをぐるぐると落ち着きなく歩き回っているコハクをちらりと見上げたティアラは、ふっと微笑してラスの金の髪を撫でた。
「嬉しくないの?」
「はあ?何がだよ、お前俺の話聴いてなかったのか?チビが苦しそうで…」
「つわりっていうのは、赤ちゃんが大きくなるために必要なものなの。だからラスは苦しくても耐えなきゃ駄目。赤ちゃん…ラスのお腹の中ですくすく成長してるのよ」
それまでずっといらいらしっぱなしで、コハクと同じように片時もラスの傍から離れずに膝を抱えてソファから見守っていたデスもようようと顔を上げた。
「……成長…」
「そう、成長。あと2か月位は続くから、そんなに心配ばかりしてるとハゲるわよ」
途端、コハクとデスが両手で頭を庇うような仕草をしたのでまたひそりと笑ったティアラは“お大事に”と言って部屋を出て行った。
コハクはすぐラスの傍らに膝をついて手を握り、うっすらと瞳を開けたラスの頬にキスをして限りなく優しい声で呼びかけた。
「チビ…何か食いたいもんないか?水は?吐きたいならすぐ言えよ、トイレは?俺が連れて行ってやるし」
「…コー……ありがとう…」
弱々しく笑ってまた吐き気を堪えるかのように咳き込んだラスの背中を撫でてやっていると、いつの間に隣に移動してきていたのか…デスがゆっくりと上体をラスに向けて傾けた。
「…………触っても…いい?」
「うん…いいよ」
掛け布団を捲って触りやすいようにしてラスの腹にぺとりと手をあてた。
とくとくとく…と刻まれている心音。
すこぶる元気で早く成長したがっているように聴こえてデスが小さく笑うと、ラスも安心したように笑って握られたままのコハクの手を握り返した。
「元気みたい。よかった」
デスの垂れた瞳がいっそう垂れた。
嬉しいのは、コハクとラスだけではなかった。
1日に数回は寝込むことがあり、吐き気も酷く真っ青な顔をしている。
コハクたちはラスのことが気がかりで仕方がなかったが、こればかりはどうしようもなく、魔法で眠らせてやること位しか改善策はなかった。
「なあ…つわりって…こんなに酷いものなのか?チビがこんなにつらそうなのに何もできねえなんて…」
魔法で眠っているラスの回りをぐるぐると落ち着きなく歩き回っているコハクをちらりと見上げたティアラは、ふっと微笑してラスの金の髪を撫でた。
「嬉しくないの?」
「はあ?何がだよ、お前俺の話聴いてなかったのか?チビが苦しそうで…」
「つわりっていうのは、赤ちゃんが大きくなるために必要なものなの。だからラスは苦しくても耐えなきゃ駄目。赤ちゃん…ラスのお腹の中ですくすく成長してるのよ」
それまでずっといらいらしっぱなしで、コハクと同じように片時もラスの傍から離れずに膝を抱えてソファから見守っていたデスもようようと顔を上げた。
「……成長…」
「そう、成長。あと2か月位は続くから、そんなに心配ばかりしてるとハゲるわよ」
途端、コハクとデスが両手で頭を庇うような仕草をしたのでまたひそりと笑ったティアラは“お大事に”と言って部屋を出て行った。
コハクはすぐラスの傍らに膝をついて手を握り、うっすらと瞳を開けたラスの頬にキスをして限りなく優しい声で呼びかけた。
「チビ…何か食いたいもんないか?水は?吐きたいならすぐ言えよ、トイレは?俺が連れて行ってやるし」
「…コー……ありがとう…」
弱々しく笑ってまた吐き気を堪えるかのように咳き込んだラスの背中を撫でてやっていると、いつの間に隣に移動してきていたのか…デスがゆっくりと上体をラスに向けて傾けた。
「…………触っても…いい?」
「うん…いいよ」
掛け布団を捲って触りやすいようにしてラスの腹にぺとりと手をあてた。
とくとくとく…と刻まれている心音。
すこぶる元気で早く成長したがっているように聴こえてデスが小さく笑うと、ラスも安心したように笑って握られたままのコハクの手を握り返した。
「元気みたい。よかった」
デスの垂れた瞳がいっそう垂れた。
嬉しいのは、コハクとラスだけではなかった。