魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
元々、ラスの出産は危険が伴うものだった。
その未来を変えたデスは、それでもなお拭えない不安を少ない語彙からどう説明すればいいのか…心配そうにラスを見つめているコハクの肩を指で突いた。
「なんだよ、どうした?」
「…薬草を採りに行く」
唐突に告げたのでコハクが訝しんだ顔をしたが、結局どう説明すればいいのかわからないまま立ち上がると、コハクから腕を引かれた。
「ちゃんと説明しろ。どこに何をしに行くんだ?」
「………魔界に行って…マンドラゴラを抜きに行く」
――不死の薬草マンドラゴラ。
姿は人参に似ているが、根っこは人型で、引き抜くと身の毛もよだつような絶叫を上げて、引き抜いた者を死に至らしめる。
あくまで人が抜いたら…の話なので、神々の立場であるデスがマンドラゴラを抜いた場合、どうなるか。
魔界の者でもマンドラゴラを抜こうとする者は居ないので、前例がない。
「お前…死ぬ気か?チビはただのつわりなんだぞ、マンドラゴラなんか…」
「……死ぬ予定だった。だから……万全でいたい」
難産の末、生まれ落ちた子供と共に死んでしまったラス――
その未来が払しょくされない限り、もやもやしたままこれから生きて行かなければならないかもしれない。
だがその未来を誰よりも憂いていたのはデスではなく…コハクだ。
「…チビは死なねえよ。ベルルがくれた腰巻もあるし、つわりを乗り越えて安定期に入れば…」
「………うん。…だからそうなるように…行って来る」
それでもコハクが手を離さないのでにらみ合うように見つめ合っていると、がりがりと黒髪をかき上げたコハクはさらに腕を強く引っ張って傍らにデスを座らせた。
「じゃあ俺も行く」
「……え…俺だけで…」
「俺はチビの勇者様なんだから俺が行かないと。で、お前は俺の従者。よし、これで決まりだな」
今はすやすや眠っているラスの見張りにどこかで遊んでいたベルルを呼び戻して残し、何度もラスの頬にちゅっちゅとキスをして優しく呼びかけた。
「じゃあなチビ。大人しくしてるんだぞ。絶対だかんな」
さしずめいつものラスなら大人しくしているわけはないのだが、今回ばかりはじっとしていてもらわなければ。
「ベルル、頼んだからな」
「はい、お任せください」
そして、魔界へ。
その未来を変えたデスは、それでもなお拭えない不安を少ない語彙からどう説明すればいいのか…心配そうにラスを見つめているコハクの肩を指で突いた。
「なんだよ、どうした?」
「…薬草を採りに行く」
唐突に告げたのでコハクが訝しんだ顔をしたが、結局どう説明すればいいのかわからないまま立ち上がると、コハクから腕を引かれた。
「ちゃんと説明しろ。どこに何をしに行くんだ?」
「………魔界に行って…マンドラゴラを抜きに行く」
――不死の薬草マンドラゴラ。
姿は人参に似ているが、根っこは人型で、引き抜くと身の毛もよだつような絶叫を上げて、引き抜いた者を死に至らしめる。
あくまで人が抜いたら…の話なので、神々の立場であるデスがマンドラゴラを抜いた場合、どうなるか。
魔界の者でもマンドラゴラを抜こうとする者は居ないので、前例がない。
「お前…死ぬ気か?チビはただのつわりなんだぞ、マンドラゴラなんか…」
「……死ぬ予定だった。だから……万全でいたい」
難産の末、生まれ落ちた子供と共に死んでしまったラス――
その未来が払しょくされない限り、もやもやしたままこれから生きて行かなければならないかもしれない。
だがその未来を誰よりも憂いていたのはデスではなく…コハクだ。
「…チビは死なねえよ。ベルルがくれた腰巻もあるし、つわりを乗り越えて安定期に入れば…」
「………うん。…だからそうなるように…行って来る」
それでもコハクが手を離さないのでにらみ合うように見つめ合っていると、がりがりと黒髪をかき上げたコハクはさらに腕を強く引っ張って傍らにデスを座らせた。
「じゃあ俺も行く」
「……え…俺だけで…」
「俺はチビの勇者様なんだから俺が行かないと。で、お前は俺の従者。よし、これで決まりだな」
今はすやすや眠っているラスの見張りにどこかで遊んでいたベルルを呼び戻して残し、何度もラスの頬にちゅっちゅとキスをして優しく呼びかけた。
「じゃあなチビ。大人しくしてるんだぞ。絶対だかんな」
さしずめいつものラスなら大人しくしているわけはないのだが、今回ばかりはじっとしていてもらわなければ。
「ベルル、頼んだからな」
「はい、お任せください」
そして、魔界へ。