魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
コハクとラスのデスの組み合わせの3人は…やたら目立っていた。

コハクはラスをずっと抱っこしているし、ラスがあちこち行きたい方向を指して指示をすればほいほいそっちへ行って買い物をしたり何かを食べたりしているし、終始コハクの後ろを歩いているデスはほとんど顔を上げない。


顔は上げないがスタイルは細身すぎるが抜群に良くて、顔も抜群に整っているのがすぐに見てとれるので、次第にコハクたちを追跡する女性たちが現れ始めていた。


「ねえコー、女の人たちが沢山ついて来てるよ?」


「気にしない気にしない。な、次はどこ行きたい?喉渇いてないか?ここの蜂蜜レモンジュースは名物なんだぜ、買ってきてやるよ」


「うんっ」


あちこちに設置してあるベンチのうち、本流となる大河の傍にあるベンチにデスと座ったラスは、女性群が割れてコハクの方についていった女たちに不安げに視線を遣ってデスの袖を握った。


「コーは女たらしだから心配…」


「……大丈夫。魔王…浮気しない」


――否定したとはいえ、マンドラゴラの薬の効果で魔力が回復したコハクがさらに魅力的な男になったのは確かだ。

どうにもラスにはその魅力が伝わっていないように見えたが、コハクから言わせれば“そこがイイ!”らしい。


「2年前まではコーは女の子と沢山遊んでたんだよ。ベルルとかエリノアとかお師匠さんとか…多分私が知らないだけでもっと沢山居ると思うの」


「………疑うと…楽しくない…。信じてあげないと…」


デスが珍しく助言をしたので瞳を丸くしたラスはむぎゅっと腕に抱き着いて身体を寄せながら光を反射する川を見つめて腹を撫でた。


「そうだね、疑うとコーに怒られちゃう。ねえデス、やっぱり女の子たちがデスのことずっと見てるよ。話しに行って来る?」


ラスに言われて少し離れた所からちらちらとこっちを見ている女たちが居ることに気付いてはいたが、もちろん興味を感じることもなくラスの頭を撫でると、あちこちから残念がる息が漏れた。


はたから見ればラスがコハクとデスを侍らせているように見えるし、逆立ちしたってラスの美貌には適わないので、勝てない戦いに挑んで来るチャレンジャーは居なかった。


「……俺は…いい…」


「そう?好きな人ができると毎日とっても楽しいから、早く好きな人ができたらいいね」


すでに毎日楽しいが…
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