魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「くしゅんっ。…??」
クリスタルパレス内に各グループに分けて住民希望の人々を案内していたリロイがくしゃみをしたので、すぐ駆け寄ったティアラが肩に触れようとした。
「大丈夫ですか?風邪でも………リロイ?」
「大丈夫です。…ああ、これは…フォーン王子と約束をしたので」
“ティアラには触れない”
そう互いに約束をしたので、頭の固いリロイはそれを遂行しようとティアラが伸ばした手を避けたのだ。
だが悲しそうな顔になったティアラに少し慌てたリロイはティアラに歩幅を合わせながら俯き、はにかんだ。
「男との約束です。あなたはこれ以上…僕に汚されない方がいい。出会った時のあなたは真っ白で、清廉潔白でした。今もそうですが、前はもっと鮮烈だった。そんな女王になってほしい」
「…そうですね。でもそれは“男と男との約束”でしょう?私はそんなの知らないわ」
「え?…ちょ、ティアラ…」
身を寄せてぎゅうっと腕に抱き着いてきたティアラの大胆な行動に瞳を見開いたリロイは、あちこちから上がる口笛や囃し立てる声に頬が熱くなりながらティアラを制そうとしたが…
「わ、私の杖になって下さい。私は王女です。こんなに毎日こんなに長く歩いたことなんてないもの」
「ふふ、そうですね。あなたの脚もラスの脚もとても小さくて…長時間歩いたことのない脚をしてる。ではこれから僕のことは人としてではなく、杖として扱って下さい。フォーン王子にもそう言い訳を」
――春を思わせるやわらかい金色の瞳で笑いかけてくれたリロイを見上げて見惚れてしまったティアラは、どうしてもリロイが“勇者様”に見えてどきどきしていた。
はじめて会った時からずっとそう思っていたし、一夜を交わした後もずっとそう思っている。
結婚などせずにこの身は神に捧げて生きてゆこうと思っていたけれど――
この身体も魂も、今もこれからもずっとリロイだけのもの。
この勇者様だけのもの。
「このマンションの最上階は影が欲しがっていたので譲ろうと思います。影はスポンサーでもあり、ここを復興させた立役者ですから」
「魔王は表舞台に立つことを望みませんよね、私はそれがすごく不思議です。目立ちたがり屋に見えるのに、そういう面はラスにしか見せない」
その頃の魔王といえば――
ラスの気を引くのに必死。
クリスタルパレス内に各グループに分けて住民希望の人々を案内していたリロイがくしゃみをしたので、すぐ駆け寄ったティアラが肩に触れようとした。
「大丈夫ですか?風邪でも………リロイ?」
「大丈夫です。…ああ、これは…フォーン王子と約束をしたので」
“ティアラには触れない”
そう互いに約束をしたので、頭の固いリロイはそれを遂行しようとティアラが伸ばした手を避けたのだ。
だが悲しそうな顔になったティアラに少し慌てたリロイはティアラに歩幅を合わせながら俯き、はにかんだ。
「男との約束です。あなたはこれ以上…僕に汚されない方がいい。出会った時のあなたは真っ白で、清廉潔白でした。今もそうですが、前はもっと鮮烈だった。そんな女王になってほしい」
「…そうですね。でもそれは“男と男との約束”でしょう?私はそんなの知らないわ」
「え?…ちょ、ティアラ…」
身を寄せてぎゅうっと腕に抱き着いてきたティアラの大胆な行動に瞳を見開いたリロイは、あちこちから上がる口笛や囃し立てる声に頬が熱くなりながらティアラを制そうとしたが…
「わ、私の杖になって下さい。私は王女です。こんなに毎日こんなに長く歩いたことなんてないもの」
「ふふ、そうですね。あなたの脚もラスの脚もとても小さくて…長時間歩いたことのない脚をしてる。ではこれから僕のことは人としてではなく、杖として扱って下さい。フォーン王子にもそう言い訳を」
――春を思わせるやわらかい金色の瞳で笑いかけてくれたリロイを見上げて見惚れてしまったティアラは、どうしてもリロイが“勇者様”に見えてどきどきしていた。
はじめて会った時からずっとそう思っていたし、一夜を交わした後もずっとそう思っている。
結婚などせずにこの身は神に捧げて生きてゆこうと思っていたけれど――
この身体も魂も、今もこれからもずっとリロイだけのもの。
この勇者様だけのもの。
「このマンションの最上階は影が欲しがっていたので譲ろうと思います。影はスポンサーでもあり、ここを復興させた立役者ですから」
「魔王は表舞台に立つことを望みませんよね、私はそれがすごく不思議です。目立ちたがり屋に見えるのに、そういう面はラスにしか見せない」
その頃の魔王といえば――
ラスの気を引くのに必死。