魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「死神が明るい場所でローブを脱いでましたね。ラスも言ってたけど綺麗な顔をしてて驚きました」


コハクにティアラへの感情をぶつけたことでティアラを意識してしまっていたリロイは部屋に戻ってドアに鍵を閉めると白騎士の鎧を脱いでソファーに腰かけた。

デスのことを誉めたので少しむっとなって答えずにいると、ティアラがいつも着ている白いローブを脱いで身体にぴったりフィットしたマーメイドラインの淡いピンクのワンピース姿になって無頓着に隣に腰かけて顔を覗き込んできた。


「…リロイ?」


「なんでもありません。出会った頃の死神と今の死神はかなり変わりましたよね。影の知り合いだからろくな奴じゃないと思っていましたが…少しずつ会話に応えてくれて、それがちょっと嬉しいです」


「ラスも死神に懐いてるけど、死神もラスに懐いてるわ。ふふ、魔王は毎日いらいらして大変でしょうね」


…いらいらしているのは自分も同じ。

フォーン王子が現れてからというものの、ティアラがあの王子に嫁いで国を継ぎ、こうして会って話すこともなくなる日のカウントダウンが始まっているのだ。

時計の針は止まってくれない。

ティアラの自分への気持ちを随分前から知りながら、ラスへの想いが先走って、ティアラがプライドを捨てて一夜を交わすことを交換条件に協力を申し出たこと…

それに応えたこと…男として、最低だ。


「リロイ…どうしたんですか?様子がおかしいですよ、疲れたんでしょう?少し横になって下さい」


「あ、いえ、そういうわけでは…」


「肩や背中ががちがちじゃないですか!うつ伏せになって!」


いつもはしおらしく大人しいのに強制的にソファーに寝かされると、ティアラが馬乗りになってきたので慌てたリロイは身を捩って冷や汗をかきながらティアラを止めようとした。


「てぃ、ティアラ!王女がそんなことをしちゃ駄目だ!」


「何がですか?いいから身体の力を抜いてリラックスして下さい」


ティアラの繊細な手が身体のつぼを的確に押して、勝手に身体の力が抜けて気持ちよくなってつい息が漏れた。


「ああ…気持ちいい…」


「でしょう?私やお母様は魔法が使えるけれど、人体の勉強もしてきたんです。明日にはきっと身体が解れてすっきりしますよ」


…優しくて素敵な人だ。

そう伝えたかったけれど、理性がそれを阻止した。
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